三軒家・泉尾の郷愁風景

大阪市大正区 地図(三軒家西二丁目付近を示す)
 町並度 4 非俗化度 8
 −大阪ドームを望む戦前の町家風景−






三軒家西二丁目の町並
 

 大阪市街の南西部、大正区付近は水の都というにふさわしく、川や運河が多い。京都府南部を流れる川と同名で紛らわしいが淀川から分流する木津川と、さらにその分流の尻無川に挟まれた三角州が区域を占める。
 この三軒家・泉尾地区は、その三角州の北部、大正駅の南側に広がる一帯である。かつてはこの付近、河口付近の小島に過ぎず、江戸初期に開拓され市街化したのだという。摂津国西成郡に属し、大坂の船番所も置かれるなど水運の拠点ともなり町が発達していった。
 現在この界隈は都心から少し外れた静かな平凡な住宅地という印象だが、佇まいは特徴的だ。あちこちに袖壁を従えた家屋があり古い町並のような風景が展開しているではないか。中には長屋風に連続している箇所もある。また本うだつのような構造体を二階の妻脇に立上げている家屋もある。
 
 
 

三軒家西二丁目の町並






 この付近は第二次大戦時に焼失していない地区で、戦前の建物が残っているからである。逆に言うと大阪市街地の戦前の住宅地は、全てこのような姿だったのか。しかし戦前とはいっても昭和に入ってからの建物がほとんどと思われ、一般的な古い町並でみられる袖壁やうだつの残る家屋よりはかなり建築年代は新しい。共同住宅のような長屋に袖壁が付いているなど、大阪でしか見られないものかもしれない。
 そんな風景が全く自然のままに、そして注目されることもなく現代に生きつづけているのは高い価値があると思う。これらの家々は、知らないうちにマンションや商業施設、或いは更地になって駐車場などに一時利用される例も多いことだろう。古い町並としての視覚的な見応え度云々以上に貴重性を知っていただきたく、ここに町並として紹介する次第である。
 三軒家地区の路地からは大阪ドームがその先に見える。川を一本隔てているのに、意外な近さに見えるのは眼前に広がる町並との激しい対比があるからだろうか。
三軒家西二丁目 商店街の中にも銅板に被われた古い形式の家屋が残る






泉尾一丁目の町並

訪問日:2007.01.03 TOP 町並INDEX