庵治の郷愁風景

香川県庵治町【産業町・港町】 地図  <高松市>
 
町並度 4 非俗化度 7 −古くは港町 現在は石材の町−
 
 




商家建築も見られる庵治の町並
 
 高松の市街地から東に5km余りの半島部に位置する庵治町。町の中心は半島の北西岸に展開し、内湾を挟んで屋島半島と対峙している。
 庵治は庵治石という良質の石材を産出する石の町として知られ、また港町としても古くから繁栄してきた。港としての歴史がより古く、文安2(1445)年の「兵庫北関入船納帳」によると年間10隻の庵治浦の船が兵庫津に入っており、荷は屋島付近で造られる塩であった。
 江戸期になり高松藩の浦番所が置かれたことから、庵治浦は商業港として発展し、諸物資の積出・積入れを行った。また廻船業も発達し、西回り航路を辿って石見浜田から日本海を遡って越後や秋田辺りまで出掛けている廻船もあった。
 庵治石は高松城の石垣などにも使われていることから、築城された16世紀後半には既に本格的に生産されていたといわれる。明治になると実際に特産品として注目され、石材業として盛んになった。花崗岩である庵治石は堅く風化にも強いため、香川県庁など頑丈な建物にも使われ広く知られるようになった。戦後は庭石や灯篭などへの需要が高まり、石細工・石工も大きく増加した。
 町は南側の地域は埋立てられたらしい新しい漁港などもあるが、北側には家並の密集した旧市街が展開している。バスなども通るメインの道路から一本山手がかつての町の中心で、一部には大柄な本瓦に葺かれた屋敷、虫籠窓をまとった町家建築などが見られる。それらは廻船業で富を築いた名残なのだろうか。
 一方で呉服店などの看板のある商店が建ち並ぶ一角はいずれも店を閉めているように見え、町の賑わいが乏しいことが少し気になった。特に港町としての活気が失われてから久しいようで、陸上の幹線交通からも隔たれ活気が余り感じられない雰囲気であった。採石業・加工業は今も盛んにおこなわれているものの、町並全体からはやや寂しい印象を抱いた。
 

 

 立派な門構えの邸宅 小規模ながら商店の連なる一角 
 



 
 

 
港周辺には石工所が多く見られる

訪問日:2021.04.25 TOP 町並INDEX