高見島の郷愁風景

香川県多度津町<漁村> 地図
町並度 6 非俗化度 10 −本瓦葺屋根の家々・石垣が特徴の過疎の島−
 


 多度津港の北西約7kmにある高見島は塩飽諸島の一部に含まれ、平面的には団栗のような形をしており、一島一山の地形であるため平地に極めて乏しい。南部のごく一部にそれこそ猫の額ほどの平坦地があるだけで、他は海岸線から直ちに斜面が立上がる。
 
浦の町並




浦の町並




浦の町並




浦の町並 浜の町並
 

 
 集落は南から浜・浦・板持の3箇所で、多度津からの船が発着する港に近い浜・浦集落にほとんどが集中する。
 平地にある浜は海岸線を岸壁が巡り、少数の漁船が停泊するのどかな集落だ。家並の裏手は畑もあり、自給自足の生活が今でも可能かに見えた。
 港を挟んで北側にある浦集落は、海岸線を歩いていくだけでは一見その存在がわからない。この集落は海崖上の台地に開けているからだ。そして崖の上にはこの島を特徴付ける町並景観が広がっていた。
 海岸沿いの道から桟道のような階段が崖の上に伸びている。その人がすれ違うのがやっとの細道を登ると、石積により雛壇状になった路地に沿い、民家が点在し町場が形成されていた。特筆されるは本瓦を葺いた家が多く見られることで、純粋な漁村でしかないこの島の集落にあっては意外性を感じさせる。
 路地には下段の家屋の屋根が迫り、山側には石積が立上る。ほとんどが空積の簡素なものだ。家々は海側にわずかな庭を持ち、金柑などの柑橘類、そしてわずかな野菜を育てている。今は水道がひかれているのか定かでなかったが、島の斜面では水が得にくいのだろう、各戸に井戸が見られた。
 路地は等高線に忠実で、坂道を極力作らないように設計されている。反対に海岸から山に向って付けられた通路は当然のことながら階段だ。海岸に通じる道は極めて少なく、横路地を中心に発達している。
 しかし、住民の姿はほとんど見かけることが無い。半数以上は無住になっているからだ。中には本瓦が半ば崩れ、庭も内部も荒れ放題になっているものもある。海風もきつく侘しい雰囲気の漂う集落であった。
 かつては廻船業にも従事し、明治から昭和初期にかけては高見島村という独立した自治体で、人口も千人近くを数えていた。室町時代にも記録のある古い集落で、半農半漁の生活だったが、江戸期に幕府領であったこともあり御用船方もつとめている。また周辺は豊かな漁場であったため、特に鯛網などで周辺の島々の中でも最高の漁獲高を誇っていた。他にも旅廻船の水主となり全国各地を巡った。明治以降遠洋漁業も盛んになり、朝鮮沖まで出漁したりと、島民は海とともに生活し、海によって生計を立ててきた。
 海岸沿いでは人よりも猫の姿の方がよく眼に入った。海を挟んで見える多度津・丸亀の町を目の前に、近年の過疎化は著しい。しかしその中にあってこの浦集落の形態は島の集落としては特殊な部類に入るだろう。このまま風化してしまうには余りに惜しい。
  
 
 


訪問日:2006.01.03 TOP 町並INDEX