金屋町の郷愁風景

富山県高岡市<産業町・城下町> 地図
町並度 8 非俗化度 5 −伝統的な町家建築群は鋳物産業繁栄の証し−






金屋町の町並


 高岡市は越中随一の商業都市であった。概要は
高岡の郷愁風景を参照していただきたいが、商業のみならず金物、仏具、漆器などの職人も多く住まう地で、中でも鋳物産業は高岡の基幹産業として古くから起り、同業者の密集した地区が今でも残っている。
 その名も金屋町。市街中心に近い金保川沿いにあり、重要伝統的建造物群保存地区の山町筋からもさほど離れていない。この金屋町は山町筋とは全く趣の異なった、そしてそれを凌駕する連続した古い町並が残っている。






金屋町の町並






金屋町の町並 軒に張出した桁には銅板が施される
 


 町並は川沿いより一本奥に入った街路沿いにほぼ直線的に500mほど途切れることなく続いている。外観がほぼ統一されているため整然とした見応えを感じさせる。それらは中二階、出桁造り、袖壁を妻部に備えた切妻平入りの町家群で、1階部分の端正な格子、2階部分の袖壁にまで見られる真壁など、北陸の町家建築の特徴が余すことなく表現されている。軒に張出した桁が銅板で被覆されていたり、細やかなところにも手抜きをしない意匠の確かさは、鋳物産業により繁栄を極めた職人たちのこだわりを感じる。産業の町でありながら商人の町のような肌理細やかさが町並全体に漂っているから驚きだ。
 加賀藩主前田利長が近隣から招いた7人の鋳物師から始まったこの金屋町は、幕末には40人を数え、高岡を代表する産業集落となった。生産するものも鉄器から銅器へと発展し、高岡銅器の名を知らしめた。これらの家々は実は奥行が深く、街路に面した母屋の裏側に中庭を挟んで作業所を構えているのだそうだ。作業所は土蔵造りとなっているといわれ、川に近いところが選ばれたことを含め、これは火災対策なのだという。町の重要産業を護る智恵である。街路からの表向きは鋳物産業の町という荒々しさを感じないのもそのためだろう。
 路面は石畳風に改められ、観光客を意識した風が見受けられるものの、公開されている旧家はおろか土産物屋など訪問客に金銭を落とさせるような施設は全くなく、端然と連なる町家群は荘厳ささえ感じられる。そんな眼で見ると石畳との諧調も感じられるいい町並であった。
 
 

訪問日:2005.10.09 TOP 町並INDEX