竹原の郷愁風景

広島県竹原市<産業都市> 地図
 
町並度 9 非俗化度 2 −製塩業で富を重ねた重厚な家々−


本瓦葺・妻入の棟が連続する竹鶴酒造

町家二階より





 


 竹原市はその名に因んで今では街路樹に竹を採用するなどして特色を示している。実は竹原駅のある周辺の新しい市街地、かつて全て塩田であったところで、古い町はその東側を流れる本川の東岸にあった。今でもそこに足を踏み入れると、俄かに古い町並が展開している。この辺りが江戸時代から塩田の経営で栄え、町人文化が栄華を極めたところである。
 町並の中心地区には現在も酒造業を営む、妻入り町家の3軒連続する竹鶴家がある。一見独立したように見えながら、軒は連続し内部は一体化している。このような多棟連続型の町家が見られるのも竹原の特徴となっている。この他にもこの町は妻入形式の家々が目立つ。これは道路に面して軒を並べる平入の圧倒的に多いこの地域にとっては珍しい。家並の裏は遡ると港、船着場だった所で、隣家の間を船繋ぎ場まで通り抜けることのできる妻入が好まれたのだろうか。
 代表的な旧家はこの他に、菱格子と反り屋根の美しい松坂邸(公開)、塩田経営や塩問屋を営み、年寄・本陣も勤めたという吉井家など、繁栄極まった時代の家屋が現在でも形を変えず残っている。町並の連続性、古い町並らしさとしては全国屈指のものといえよう。その中で、洋館風の歴史民俗資料館が異彩を放ち、内部には製塩業を中心とした資料が多数紹介されている。
 塩田経営により、裕福さを増した町人は元禄文化の影響を受け、学問を極める者も出た。頼一門もその一派で、町並北部の上町には頼山陽の叔父、惟清の旧宅が保存され公開されている他、本通から派生している大小路には、長屋門を備えた武家屋敷風の春風館が今でも威容を誇っており、これも叔父の一人で医者を開業した春風の屋敷である。
 重要伝統的建造物群保存地区ともなっているため観光客の姿も多く見られ、家々にも外来客を歓待する向きが色濃く感じられる。しかし土産物屋を扱う商店なども派手な看板を掲げているわけではなく、それにより雰囲気を壊すことはない。この町ではボランティアガイドが町並の案内をしているが、最近高齢化し、新規の希望者も少なく問題ともなっている。
 




菱格子の美しい松坂家




 頼山陽の叔父の屋敷であった春風館・復古館付近の町並  妻入りの町家も多く見られる


※前半4枚:2008年2月撮影
後半4枚:2004年12月撮影

訪問日:2001.10.21
2008.02最終取材
TOP 町並INDEX