竹富島の郷愁風景

沖縄県竹富町<農村集落> 地図
 
町並度 8 非俗化度 2 −島民の意識の高さが残した美しい八重山の集落−





竹富島の町並

 竹富島は八重山諸島に属し、中心の石垣港からは最も近く船で10分余り、便数も多く容易に訪ねることが出来る。竹富町は八重山諸島最大の島西表島をはじめ、波照間島や黒島、新城島など周囲の多くの離島を町域に持つが、町役場は石垣島にあるという珍しい自治体だ。
 珊瑚礁の隆起によって形成された島で、海岸部に平地はなく小高い中央部が低平な独特の地形で、そこに集落が展開する。島の集落は一般に海岸線に立地するが、ここでは島の中央にある。島でありながら古くからの主産業は農業であり、小さな島ながら家々の佇まいも広々としている印象を抱く。
 竹富島の集落を形成する家屋は平屋の母屋、琉球赤瓦、琉球石灰岩と福木の生垣など八重山地方本来の外観が濃厚に残されている。重要伝統的建造物群保存地区に指定されたこの集落は石垣島からの利便性も良いこともあり多くの探訪客があり、団体客も頻繁に訪れるところとなっている。集落は適度な広さに展開し、土地も平坦であるので貸自転車を利用するのが一番手ごろで、また集落内を巡る水牛車も観光要素である。
 八重山地方はの歴史は決して恵まれたものではなく、琉球王国の辺地にあって離島から石垣島への強制移住を強いられたり、マラリアなど疫病の流行や津波被害などもあった。戦後本土に復帰してからも那覇への一極集中が起り離島の集落は活気を失っていた。伝統的な集落景観は多くが失われていったが、竹富島の住民は高い共同意識があり、家々や家並が保持された。古くから伝わる祭事も多く、連帯感が高かったことの表れだろう。
 前述のように八重山諸島の一大観光地ともなっている竹富島の集落だが、ビル建築や現代的な外観の住宅は皆無であり、また観光客に迎合したような土産物屋の類も一切ないことは評価すべきことで、島民の意識の高さを何よりも象徴するものだろう。訪ねたのは元日であったが、琉球石灰岩の生垣越しに色とりどりの花が咲き、集落内は塵や枯葉すら落ちていないといった印象で、島全体が特別区といったような雰囲気である。しかしそれが嫌味に感じないのは、やはり観光客におもねるようなものがないからだろう。唯一といえるのが観光水牛車だが、これも質素で無骨なもので、これが練り歩く風景は集落風景に絶妙に溶け込んでいた。
 なお海岸部も礁湖と呼ばれる珊瑚礁に由来する遠浅の浜辺が展開しており、星砂の浜をはじめ美しい海浜風景を見ることが出来る。
 
 











訪問日:2013.01.01 TOP 町並INDEX