日比の郷愁風景

岡山県玉野市【港町】 地図 
町並度 4 非俗化度 8 −児島半島南部の主要な港町−
 

 玉野市日比地区は児島半島の南端付近、市街中心の宇野地区より約5kmの位置にある。
 古代から港として本州四国間の船の往来があり、また中世になると商船の出入港も多くなった。一例を挙げると、『兵庫北関入船納帳』の文安2(1446)年の記録では八回の兵庫北関への入港が記録されている。
 江戸時代には瀬戸内航路の重要な港として加子浦に指定され、廻船業も盛んになった。当地から積込まれるのは紙・米・大麦・小麦・大豆そして塩であった。藩の廻米の輸送にも従事したほか西廻り航路の北前船も寄港し、出入りする緒船との商売を行える問屋株を持つことを許され商業も興った。
 
 




日比五丁目の町並




日比五丁目の町並 日比四丁目の町並




日比三丁目の町並 日比四丁目の町並


 また近海は好漁場で漁業も盛んに行われ、また塩田による製塩も基幹産業として発達したこともあり、児島半島随一の町場として発展した。但し、明治後期に宇野港が近代的港湾として整備されると、次第に港としての繁栄は宇野に移った。
 現在、海岸部は埋め立てられ一部が工業地として利用されている。表向きは古い港町、古い町並のありそうな雰囲気が感じられない。その中にあって市街地の南側は港町時代からのものらしく、街路が狭く所々に古い建物が残っていた。
 江戸時代に遡るであろうものは見られないが、町家風建築をはじめ元旅館であった建物も見られる。瑜伽山詣での客も多く立寄ったことから、宿屋をはじめ料理屋なども存在し、遊興的色彩もあったのだという。そういう眼で見ると、旧家の意匠の細部にそのような雰囲気を残すものもあるように思えた。

訪問日:2016.04.10 TOP 町並INDEX