谷町六丁目界隈の郷愁風景

大阪市中央区<都市部の非戦災地区> 地図
 町並度 5 非俗化度 4
 −都心に残る下町風情 坂の町−






谷町六丁目の町並


 大阪の市街中心部を南北に上町台地と呼ばれる微高地が走っている。北は大坂城あたりから堺市域まで認められ、その比高は20m程度ながらも、全くの低平な市街地というイメージを覆すものとして、外部の者は意外に感じるだろう。古くは今の大和川は現在の堺市と大阪市の境を流れるものではなく、東側で大きく北に蛇行し、河内湖という湖を形成して淀川に合流しており、旧国名の河内はこれに由来している。古代にはこの北流する大和川の西は海とを限る小高い砂洲であり、上町台地がその名残なのだという。
 この谷町界隈は第二次大戦時の災害から逃れ、古い町の姿が残っており、またその台地上に位置していることから大阪としては独特の風景が展開する一帯である。木造の長屋建築があり、商店の看板建築があり、また大阪市街地に一時流行したであろう、通りに面して両側にうだつのようなものを構えた町家風の建物が眼につき、独特の町並が連なっている。
 中でも谷町六丁目から七丁目にかけての一帯は、下町的な体臭がとりわけ濃い。中心といえる位置に空堀商店街が東西に走り、この位置が周辺でもっとも土地が高くなっている。南側と北側はそれぞれ谷間になり、さらに東に向うにつれて高くなっている。全て市街地となっているため一見わかりにくいが、複雑な地形だ。一部では崖状となり、石垣により隣接する宅地がかなりの段差となっている。そして家々はほとんどが中層建て以下の小規模商店や住宅で、袋小路の路地もそのまま残されている。
 このたたずまいはやや注目されている向きもあって、散策する人の姿も目立つ。特に若い人が多く見られたのが意外だった。古い家を利用したギャラリーや、路地空間を利用した小さな試みや工夫も見られ、都心にあって貴重な風情を感じられるこの界隈の素材を大切に活かしながら、外部に向けて発信をされているようだ。このような試みは、非常に好ましい。根こそぎ新しい物を持って来ようとするような色が全く感じられず、その一方でさりげない粋が感じられるからだ。伝統的な古い町並でこれをやられると顔をしかめたくなるようなものだが、都会の下町には実に効果的である。
 

階段も随所に残る。
上町台地を象徴する風景。



このような手付かずの路地が残るのは奇跡的である。




「大阪うだつ」の見られる独特の町並風景 長屋の連なる小路風景




 看板建築の連なる一角 路地の向うに高層マンションを望む


訪問日:2006.04.29 TOP 町並INDEX