田沢温泉の郷愁風景

長野県青木村【温泉町】 地図
 町並度 5 非俗化度 6 −山懐に展開する上田藩直営の温泉地−
 






 上田市郊外にある温泉としては別所温泉が広く知られるところだが、青木村にあるこの田沢温泉も古びた旅館が狭い谷沿いに建ち並び風情ある町並が展開している。




田沢温泉の町並 この木造三階建旅館を中心に展開
 


 7世紀の開湯とも呼ばれる歴史の古い温泉場で、上田藩主は直営事業として温泉の建物の普請などを行っていたという。『上田藩村明細帳』
−宝永3(1706)年−によると「上田迄湯本(田沢温泉の当時の字名)ヨリ本駄賃百四十四文、から尻(馬に積む荷のない場合)九十二文」などとあり上田城下との交通も多かった。
 温泉は子持の湯などの別称があり、古くから子宝の湯として知られていた。藩関係者だけでなく一般民にも開放されていたらしく、湯銭・薪代(現在でいう利用代金)は300石以上の家中500文、足軽100文などとあって、一方で平人は12文であった。しかも藩民以外にも広く開放されていたという。
 木造の温泉旅館が5・6戸集まっているだけの小さな温泉地である。しかし木造三階建ての大型な旅館を中心とした佇まいは、昔ながらの温泉町といった風情を濃厚に感じることが出来る。歓楽的要素はほとんどなく、1箇所ある共同浴場からは洗面器の音が聞こえ、建物の前では湯上りの日帰り客が歓談したりしている。ここだけ特別の時間が流れているような錯覚を抱く小さな温泉街であった。
 






訪問日:2014.09.14 TOP 町並INDEX