熊の郷愁風景

静岡県天竜市【街道集落】 地図  <浜松市天竜区>
 町並度 6 非俗化度 8  −秋葉神社に向う街路の結節点−






 熊地区は天竜川の支流阿多古川の上流域、さらにその支流沿いに開ける狭い盆地状の地形に立地している。風変わりな地名は紀州からの移住者が熊野三山を祀ったためという説、熊などの野獣が多く熊の谷と呼ばれたことによるなどと諸説ある。
熊の町並






 江戸時代は大半が幕府領で、西遠州や東三河方面から秋葉神社へ向う際、ここが中継地となっていたことから旅籠などが立地し、宿駅のような様相を示していたという。今地図を見ても、各地から複数の道路がここに集まりまた分岐しているのがわかる。天保13(1812)年の職業構成は旅籠13の他は農家82・茶屋9・大工4・樋屋3・酒屋2などであった。農業は麦や稗などの雑穀、茶、桑、楮などが作られた。
 集落の北端付近では直角に街路が屈曲しており、その付近には数軒の商家を思わせる大型な建物が残る。緩い坂道も相まって重厚感のある古い町並が展開していた。支流を古い橋で渡る辺りからは平坦になり、商店を思わせる家並が連なっていた。現役で店を続けているのはわずかであったが、以前はさまざまな商いが行われ、ここを多くの人々が行き交っていたのだろう。
 この地区に至るにはどの方角からも遠いイメージだ。最も近い市街地といえるのは天竜の二俣だろうが、それでも20km近く離れており、幹線道路からも大きく外れ延々山道を辿る必要がある。そんな山中に商家が建ち並ぶ町並が展開しているということは、秋葉神社を頂点とした人や物の流れが盛んだったことを示しているようであった。




   
 
訪問日:2019.11.04 TOP 町並INDEX