豊島(唐櫃)の郷愁風景

香川県土庄町<産業町・漁村> 地図 
 
町並度 5 非俗化度 6  −港と水に恵まれた丘の上双方に展開する集落−


 

唐櫃(岡地区) 
 

 豊島は小豆島の西に位置し土庄や高松、宇野などとの船便で結ばれている。現在は土庄町の一部となっているが江戸前期までは備前国に属し、宝永5(1709)年から讃岐国小豆島内の土庄郷となった。しかし、天保9(1838)年からは美作津山藩領の飛地となっている。
 周囲20kmほどの島で集落は主に北岸にあり、西側の家浦と東側の唐櫃
(からと)に旅客船やフェリーの発着する港がある。
 この島の特筆される点は豊島石と呼ばれる石材が産出されることで、独特の風合いや加工しやすい特徴を持ち、古くは室町時代から採掘され、桂離宮の灯篭など著名な石造物にも使用された。むろん、島内の構造物や建築物などにも使われ、石垣や石塀などの多く見られる風景は各集落に共通している。
 唐櫃(岡地区)  
 



  唐櫃(浜地区)
 

 唐櫃は島の北東部、標高100mほどの丘陵部にある岡地区と港のある浜地区がある。前者は文字通り丘の上にあり、周囲に棚田があることで知られるように農村集落であり、渋い銀瓦屋根の連なる家並に土蔵も散見される。この集落や水田が立地したのは「唐櫃の清水」のお蔭だろう。集落の近くから湧出しており水量も豊かであった。
 浜地区は港を中心に集落が展開し、家浦地区に比べるとやや漁村的雰囲気が感じられる。延享3(1746)年の記録では大工3、素麺屋1、商人1、問屋1、桶師1とともに漁師3とある。人口は800人余りと記されている。
 ある程度の規模の御宅は、石塀に囲われて瓦を葺いた小さな門がある姿が標準的だったと思われ、それらのみが残され現代風に建て替えられた姿もいくつか見かけた。
 



 
 岡地区の命の水といえる唐櫃の清水
   

※文章の一部は「豊島(家浦)の郷愁風景」と共通
 
訪問日:2021.04.24 TOP 町並INDEX