帝塚山の郷愁風景

大阪市住吉区【住宅街】 地図
 町並度 3 非俗化度 8 −歴史の古い高級邸宅地−
 




 帝塚山地区は住吉区の北西部、南海本線と阪堺電気軌道の上町線に挟まれた一帯で、東には万代池公園がある。現在では大阪市域南部にあって周囲の住宅地・商業地に取り込まれている。
帝塚山中二丁目の町並
 

 帝塚山と呼ばれるが特に山地があったり小高い丘の上というわけではない。ただ標高の上では周囲よりやや高い土地であるといえ、特に西側はその小台地が途切れて斜面を形成している。これは大坂城付近より南に広がっている上町台地の一角にあることによる。起伏の乏しい大阪平野にあって、この上町台地周辺は高低差のある地区として認識される。
 台地の上にあることもあり水利に乏しく、長らく人口の定着を見なかったが、明治以降大阪市街地の拡大、天王寺が府南部のターミナル駅として整備されたことで郊外地としての価値が向上した。南海電気鉄道をはじめ、高野鉄道(後の南海電鉄高野線)、阪堺電気軌道など多くの鉄道網が整備され、それをベースに郊外地として住宅が整備された地区として天下茶屋、帝塚山地区があった。とくにこの帝塚山地区は大正時代になって著名人にも注目され、高台にあることから高級住宅街として計画的に整備されてきた。現在でも帝塚山というと高級住宅街というイメージが大阪の人に認識されており、実際の町域よりやや拡大されて帝塚山と通称されている向きがある。
 地区の中央を南海電鉄高野線が縦断し、その西側ではやや無秩序な街路展開となっているが、東側は碁盤の目状に整備され、当時の住宅都市計画そのままに踏襲されている。高級住宅団地というと高度成長期以後の姿がイメージされるところだろうが、ここではその50年以上も前の大正時代のものであり、その景観はむしろ古い町並に通じるものがある。
 もちろん建替えによって近代的な佇まいとなった箇所も多い。ただ随所に木質感の高い住宅、一部には土蔵などが見られ、板塀に囲われた前庭など丹精に造り込まれた様子が街路越しにもよくわかる。
 現在では周囲の市街地との境も曖昧になっている。東側を阪堺電軌の電車がのんびりと停留所を辿っているのを見ると、現在の高級邸宅地というイメージとは異なった長閑な雰囲気も感じられる。
 




帝塚山中二丁目の町並 帝塚山中三丁目の町並




帝塚山中三丁目の町並 帝塚山東一丁目の町並

訪問日:2015.06.20 TOP 町並INDEX