栃尾の郷愁風景

新潟県栃尾市商業町 地図 <長岡市>
 
町並度 6 非俗化度 6  −雁木と妻入り商家の連なる町−

滝ノ下町の町並


 栃尾は南東に魚沼丘陵などを控えた山懐の一角に開ける町である。
 江戸期は一貫して長岡藩領であったが、戦国時代には城も構えられていて一個の独立した自治が執り行われていた。
 古くから商業が盛んな土地で、馬市が古くからあったとされ、江戸初期の元禄期には六斎市が立っていた。既にその頃、米などの穀物問屋・紺屋・鍛冶・麹屋・左官などの商人や職人が台頭し、酒座や髪結株なども公認され、商業町として本格的な発展を示していた。
 但し町並は江戸時代に遡るような古いものは皆無のようである。歴史によると戊辰戦争の折に激しい戦場となり、市街地はほぼ潰滅しているからだ。それ以前にも当地で盛んだった紬織が栃尾商人の特権であったため、農民による打毀しや一揆が多発していた。江戸後期からは常に治安が不安定な土地だったのである。
 現在の栃尾の町からは騒動や戦乱に巻き込まれた歴史を感じさせない地方都市らしい長閑さが漂っている。町の中心街がそのまま古い町並で、時折屈曲しながら、また川を渡りながら約1.5kmにわたって続く。
 一番の特徴は雁木が良く残っていることだ。雁木は冬季の積雪時にも足下を気にすることなく歩行者が通行できるために作られたもので、各家の軒先を長く張出して木組で支え、それを連続させている。近代的な商店街のアーケードなどと違い中を歩くとやや薄暗く、陰気な感じとなるが冬の足場確保のことを考えると実に合理的な構造である。
 この雁木は古い町並の風情を高めてくれる効果がある。先に書いたように少なくとも明治以降の建物がほとんどであり、しかも現代的な商店に装いを新たにした姿も少なくない中で、雁木を通して眺めると全て古い町並に見えてくるから不思議である。
 その中で南部の滝の下町、旭町にかけては妻入りの伝統的な商家が連続した箇所があり、町並としての見応えが感じられる。雁木の上に見える二階部分は、全面板貼りまたは梁を表面に出した真壁となっていて、屋根は瓦を葺いているものもあるがトタン葺きも多い。内陸部にあるこの町ではかなりの積雪があるのだろう。それを思わせるたたずまいであった。
 中心部では雁木はアーケード調の新しいものに変わっているが、川を渡った北側の大町、新町付近では再び絵になる町の風景が展開している。ここでは大きな間口の商店や造り酒屋、一部には洋風建築も見られ、明治以降になってから主な発展を見た地区と想像された。
 町ではこの雁木の町並を活かした街づくりに取組んで居られるようで、私が訪ねた時も雁木の商店街でスタンプラリー等の催しが行われていた。古い雁木が取壊されてしまうと、古い町並としては平凡な姿となってしまう。建物以上にこの雁木の保存を大切に続けていっていただきたいものだ。
 この町の名物に巨大な油揚げがある。豆腐屋が非常に多く、しかもどの店でも豆腐そのものより油揚げが商品として目立っている。私も一つ買ってみたが長さ20cm、厚さ2cmほどもある非常に大きなもので、調味料もなくそのまま食すしかなかったため格別の味ではなかったが、醤油と生姜を添えて揚げたての熱々をいただくのが良いのだそうだ。
 




谷内二丁目の町並  滝ノ下町の町並


 


栃尾大町の町並 左は「越の川」の越銘醸 栃尾大町の町並



栃尾新町の町並
訪問日:2007.05.04 TOP 町並INDEX