戸川の郷愁風景

宮崎県日之影町<農村集落> 地図  
 
町並度 5 俗化度 6
−時を経て芸術的ともいえる風合いを感じさせる石垣の集落−
 






戸川集落 石垣・石造の蔵が独特の風景を見せる


 延岡市に流れ下る五ヶ瀬川は高千穂などの景勝地を上流域に持ち、流域に大きな市街地を持たないことから清流のまま太平洋に注いでいる。その支流ともなるとますます穢れを知らない清澄な流れとなり、その一つ、日之影川が開析した谷間にこの戸川集落はある。
 五ヶ瀬川の谷は深く、最近になって左岸の崖の中腹を縫って建設された国道は長大橋を連続させながら支流を跨いでいる。中でも有名な青雲橋は日之影川を跨ぐ橋、下から見上げる迫力のある橋梁だ。
 戸川は支流を8kmほど遡った位置にある小さな集落である。訪ねたとき、石垣を積上げた水田で田植えが行われていた。田をはじめ宅地もすべて石垣で造成されている。それも年季の入った古びたもので、乱雑なように見えてそれが自然に溶け込んだような美しさを強く感じさせる。石垣の村として注目されている集落である。
 古いものでは江戸時代に遡るといわれるその石積はある場所では風化したように白っぽく、また他では苔に覆われている。多くが空積構造でありながら頑丈で安定感を感じるのは、昔の人が構造的な安定を考慮に入れて慎重に積上げたからなのだろう。長い年代を経て確固たる頑丈性を増しているようにも感じられる。
 比較的近代まで自給自足の生活が営まれていた集落といわれ、背後には石積の棚田もある。
 通過点にもなりにくい谷間の集落で、今のところ探訪客も少なく、静かな環境の集落が保たれている。わずか7軒ほどの小さな村であるが、石垣や家々は手入れよく保たれ生活環も強く感じることができる。
 










訪問日:2011.04.30 TOP 町並INDEX