所子の郷愁風景

鳥取県大山町<農村集落> 地図
 
町並度 6 非俗化度 8 −大山の裾野に開ける豪農の集落−
 




所子の門脇家付近の町並
 

 大山町は文字通り、大山の北麓にあり日本海に面している。町の東部の所子地区は裾野の緩やかな斜面に開けており、周囲の地形は雄大さを感じさせる。
 ここは中世から所子荘として名が見え、近世は汗入郡所子村に属していた。稲作をはじめ綿花、紅花などを産した農村集落であったが、郡の大庄屋をつとめた門脇家は、17世紀後半にここに定住したとされ、多くの田畑を所有し藩内でも上位に位置する大地主であった。
 この門脇家住宅は非常に豪勢な構えを今に残し、周囲を板塀で囲み、茅葺屋根の主屋をはじめ、離室や茶室など多数の建物が集積し、周囲の田園地帯に対し不似合いともいえる一大屋敷型旧家であり、国の重文に指定されている。
 全体を歩いても10分とはかからぬほど小さい集落である。しかし町全体に漂う、裕福な家々の雰囲気は独特である。今でも長屋門を残すものや、大きな土蔵を構える家もある。そして扇状地の端に位置することもあり、それらの家並の正面には大山からの伏流水が豊かな清い流れを作っていた。至る所に小さな石段を築き、水汲み場や洗い場としてある。今でも使われているような雰囲気であった。
 いわゆる都市型の町家集落とは趣を全く異にする、豪農の集落ともいえる特異な町並といえよう。そしてさらに特殊ならしめているのが、門脇家自身が古い町並を形成しているという点である。周囲に展開する、大山の裾野風景の雄大さもそれを一層引き立てている。西伯耆を代表する旧家を中心に、異次元的空間を訪れる者に感じさせる。
 なおこの所子集落は2013年に重要伝統的建造物群保存地区となっており、今後徐々に景観整備等を行うとのことである。

 




街路脇の水路もこの集落の特徴だ 門越しに門脇家の母屋を望む




美甘家住宅(登録有形文化財)

訪問日:2003.06.03
2014.08.13再取材
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