富海の郷愁風景

山口県防府市<宿場町> 地図 
 町並度 4  非俗化度 8  −山陽道では貴重な海沿いの宿駅−
 






富海の町並(旧山陽道沿い)

 


 富海地区は防府市の東端の海岸部に位置し、美しい砂浜を持ち、夏には海水浴客で賑わう。
 ここは古くは山陽道の宿場町として開けたところである。町は東西に長く1kmほど続き、かつての街道筋には本瓦葺、妻入の由緒有りげな旧家の姿が点々と認められる。大きな神社もあり、最近になって開発されたところではないことは一目でわかる。中心地区の中市に高札、本陣が置かれていたが今は残っていない。
 また、宿場町以前にここは漁村としても栄えていた。鯛、鯵、鰯などの漁獲で利を得ていた。安永年間(18世紀後半)頃よりここの漁師は、漁船で旅客や貨物を瀬戸内海各地に運搬する「飛船」業も請負い、大坂方面にも向っていたと言われている。
 旧山陽道沿いの海側、家々の裏手に当たる路地にその姿をしのぶことができる。土地が一段低くなっており、主屋裏に構えられた土蔵は半地下構造のような構造となり、路地側から見ると三階蔵となっている。一部には煉瓦造りのものもあり、独特の町並景観を示している。かつては直接船着場に面していたといわれ、荷を揚げ下してした名残であろう。この路地は船蔵通りと名付けられ、案内板も設置されるなど地元の方々は意識されているようだ。
 古い町並としての連続性は薄いものの、宿場町と港町・漁村の顔を併せ持つ貴重な町であり、風情は濃厚に感じ取ることができる。
 

 





 
 

 海側の裏手に展開する船蔵通りと呼ばれる小路

後半4枚は2020.07再訪問時撮影

訪問日:2002.01.04
2020.07.01再取材
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