土佐久礼の郷愁風景

高知県中土佐町【漁村・港町地図
 町並度 5 非俗化度 6 
−鰹の一本釣りで有名な漁師町には酒蔵や商家の佇まいも残る−







商家風の建物も目立つ久礼の町並
 

 
高知県の海岸線は東半分では出入が少なく単調であるが、西部は入江や半島が比較的多くなり、地図にも複雑な海岸模様を描く。入江には古くからの良港が構えられていることが多く、土佐一帯で盛んな鰹の一本釣りもどちらかというと西部の各漁村で盛んに行われ、そして水揚げされている。
 その一つである久礼の町をここで紹介する。
 市街地が展開する一帯は平地が広がっているものの、周囲は嶮しい山々に取囲まれていて、北に須崎方面へ向うにも南の仁井田(窪川)方面へ向うにも厳しい峠越えを要した。そのため外との往来には海を介することが普通だったのだろう。
 この町は近年鰹を前面に売り出し、大正市場と呼ばれる魚市場も遠方からの客も迎え入れ好評だ。やや観光地的な様相を示しているのが少々気になるところであるがこの程度であれば町興しとしても有益であろう。生一匹がそのまま売られていたり、また新鮮な鰹のたたきや鰹飯などを店先で食することの出来る店も幾つかある。
 そのような店を冷やかしながら賑わいのある一角を抜けると、意外にも商家の外観をした古い町並が残っているのに気付く。漆喰の塗屋造りで格子や虫籠窓などの意匠もみられるのは近畿中央で見られる町家の姿と良く似ており、久礼の港は鰹漁だけでなく海運を通じて上方との文化交流も盛んに行われていたのかもしれない。
 漁家だけでなく商家も栄えたのはそのためなのか。象徴的な風景が大正町市場とは駅前通りを挟んで反対側、西岡酒造付近の町並だ。杉玉を提げた主屋を中心に伝統的な町家が連続し、優れた町並景観を誇っている。この西岡酒造は県下最古の酒蔵も所有しており、見学者も多いという。
 一方市場付近から海側に向けては漁師町風の素朴な家並が続いており、鰹の町久礼本来の素顔を見ることが出来る。観光客の訪れの絶えない商店街から一歩外れるだけでそうした雰囲気となるのも、また面白い。
 




西岡酒造と付近の町並







大正町市場

 

訪問日:2009.05.05 TOP 町並INDEX