椿山の郷愁風景

高知県池川町<山岳集落> 地図 <仁淀川町>
町並(集落景観)度 6 非俗化度 10 
−四国山地に源を発する峡谷の最奥部に位置する山岳集落−



 松山と高知を結ぶ国道33号線、高知県の西部で池川町方面に国道439号線が分岐する。町の中心からさらに北西に向い国道494号線がわかれ、さらに支流に沿い北へ向う細道を辿る。そのような過程を経てこの椿山集落に辿り着く。
集落の一番高いところから谷間を見る






石垣や石段が多用され 家々を立てる苦心が伺える







 愛媛県との県境にも近く、四国山地を刻む峡谷の斜面になぜ展開するのか不思議に思うほどの集落で、標高600〜800mの急峻な山肌に家々は文字通りへばりついているといった風情だ。集落を結ぶ道は等高線方向に行きつ戻りつ極力坂道を緩くするように造られ、その一往復する間に家々の展開がある。道路からまたその一段下の道路まで歩行者専用の生活道が結んでいる。或る所では急な石段となり、これを上り下りするだけでも体力を要する。

 秘境と呼ばれるこの集落は平家の落人伝説が付帯し、近年まで焼畑農業が行われていたことでも知られており、かなりの山上まで畑地として利用されていたという。今は集落の中だけにほぼ農地が限定されているのは人口が激減したからだろう。昭和30年には約250人の人口を抱えていたこの集落も現在では20人を切り、空家も目立つ。集落としての存亡にも関わるような状況となっている。かつては小学校もあったというが全く今の情景からは想像も出来ぬことである。
 宅地を造成することも困難な地形で、石垣を高々と積むなどして何とか平坦面を確保する苦心の跡が至るところに見られる。屋根越しに谷間のはるか下が見下ろせる地点もありよくぞこんな峻嶮な斜面に集落を形作ったのかと感心するばかりである。
 雛壇のように階段状に展開する家々は単純な展開ともいえるのだが、地形の制約上この形でしか集落が形成し得なかったのだろう。石を投げれば下の家々の屋根を飛び越えて谷底にまで達しないかと思わせるほどの山岳集落のことである。時折眼にする住民の方も高齢者が多い。畑へのちょっとした上り下りだけでも大変だろう。
 集落として少しでも長く生き永らえてほしいと思いながら、後にする時は名残惜しい気分であった。



訪問日:2009.05.05 TOP 町並INDEX