柘植の郷愁風景

三重県伊賀町 <宿場町> 地図 <伊賀市> 
 
町並度  3 非俗化度 9  −大和と伊勢を結ぶ国境の宿駅−





 伊賀地方の北東端、北は旧近江国、東は旧伊勢国への国境を控えた土地に柘植の町がひらける。現在も関西本線と草津線の分岐駅が設けられていることが示すように、交通の主要点としての位置づけがなされ、ここに上柘植宿が設置されていた。伊賀地方には伊勢や大和、近江と通じる多くの街道が走っていたが、ここを通るのは加太越奈良道と呼ばれるもので、東に向うと東海道関宿へ、西へは上野城下を経て大和国に達するものであった。津藩の藩主なども利用していたため本陣を勤める家も指定されていた本格的な宿駅で、江戸初期の寛永15(1638)年には公用馬の数が28匹という記録が残っている。
 鉄道交通の上でも営業区分上「幹線」となっている二本の路線の分岐点であるため、それなりの賑やかさを呈する町並という印象を抱いてしまうが、町の規模はごく小さく、人通りも少ない。
 旧街道に沿う家々はのんびりとした田舎町といったたたずまいで、大火でもあったのか古い旅籠や商家を思わせる建物もほとんど残っていなかった。しかし家々の並びには宿場町時代の名残が残っているようで、それは街道がゆるやかに曲線を描き続け、視界の先が家並で塞がれることによるのだろう。町の中心付近で二度直角に曲る箇所もあり、街路形態が昔のままを留めていることが、辛うじて旧上柘植宿の存在を語っているようだった。 
 



旧上柘植宿の中心、街路が直角に折曲る辺りの町並






茅葺の家が一軒だけ残っていた








訪問日:2006.10.08 TOP 町並INDEX