津市街地の北部、上浜町界隈に古い町並が残されている。旧伊勢街道沿いに展開し、造り酒屋や厳かな門を従えた邸宅を中心に、平入り町家も残る町並が連なっていた。
最も見応えのあるのが町の中央部にある阿部家住宅で、街道に面した間口の広い主屋の両妻部に本うだつが立ち上がる迫力を感じさせる旧家である。酒や醤油の醸造業を営んできた商家で、市の文化財にも指定されている。典型的な商家建築であり1階部には肌理細やかな千本格子なども保たれている。
この建物を中心に、角地に土蔵が二棟連続する風景など町並を象徴する風景が展開していた。際立った連続性は感じられないが、格式高い商家が多数存在していただろうことはその佇まいから推測できる。
江戸時代、津城下の北外れに位置するこの町は大部田村と呼ばれていて、街道集落であった。伊勢の街道は全て伊勢宮に向っており、特に御蔭参りの折には爆発的な通行があったという。そうした旅人や城下町に出入する人々を受けて、城下の入口に当たるこの町に商業町が発達したことは自然なことであろう。
町の北端を横切る川に架けられた橋が江戸橋と呼ばれるのは、参勤交代で江戸に向う大名を送り出したところという意味が込められており、近くには常夜灯が保存されている。
一部では道路拡張が行われており、古い町並の残る地区までその影響が及ばないか心配しながら後にした。
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