月田の郷愁風景

岡山県勝山町<産業町> 地図 <真庭市>
 
町並度 5 非俗化度 10   −川沿いに開ける木材の町−






海鼠壁や虫籠窓などの意匠を持つ旧家が見られる月田の町並


 月田は城下町・街道集落として繁栄した勝山から、旭川支流の月田川を少し遡った位置にある。現在は勝山町の一部であるが、古くは真島郡月田郷と呼ばれ、中世の頃の資料は定かでないが市場も存在していたと言われる。
 ここは木材・茶の産地として古くから名高く、特にヒノキは月田檜と呼ばれ岡山においても価値が高かった。当時は搬出を専ら川運に頼っており、ここで集積された木材は、高瀬舟の往来の終点であった勝山まで「管流し」をし、そこで筏を組んで岡山城下に運ばれていたという。
 一方で幕末頃から竹細工も盛んになり、明治期には70人以上が従事していたといわれる。「月田の竹細工」と呼ばれていたもので、基幹産業として位置づけられていたようだ。当時は家内産業的な生産で行商が中心だったがその後衰退した。しかし近年国の伝統工芸品にも指定され今でも細々ながら技術が受け継がれている。
 現在の月田の町は、木材産業華やかだった頃の名残が多く家並に感じられる。町は街路に沿ってほぼ一直線に展開しており、中二階の町家形式を維持し、シンボルの造り酒屋も健在だ。伝統的な造りの家は月田川に面する方に集中しており、当時は家屋の裏から川へ向けての物資の取引があったことを匂わせている。月田川からの眺めは造り酒屋の土蔵が並び絵になる風景であった。
 かつては姫新線に当駅始発の急行が設定されていたりしたが、現在の町の雰囲気は家々の造りからかつては賑わっていただろうことが伺えるだけで、人の姿も余り見られない山間の小さな町である。勝山の陰に隠れて注目されることは全くといってよいほど無いが、意識され保存するに値する質量は保持されているといえる。

 










訪問日:2003.08.03
2015.03.22再取材
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