鶴来の郷愁風景

石川県鶴来町<門前町> 地図
 
町並度 6 非俗化度 5 −信仰の山・白山への拠点として発達−
 


 鶴来町は県の中央部、金沢市の郊外に位置する町で、北陸鉄道で30分ほどで結ばれている。平野部が徐々に狭まり山間部への入口にあたる谷口集落として古くから発達していた。
鶴来の町並 重厚な町家・商家建築が多く残る










 郊外地的な住宅地が展開する地区もあるが、中心街は歴史性を強く帯びた佇まいが残り、古い町並を形成している。重厚な切妻平入りの伝統的な建物が目立つ中心街は連続性も高く、厳かな雰囲気が漂っている。酒造家をはじめとした老舗の姿が、その印象を強めているようだ。
 鶴来は古くは剣と表記されており、この扇状地の要を占める集落は背後の山間部からの物資集散地として中世から発達していた。その本来的な姿は信仰の山白山の門前集落であり、白山宮(白山比盗_社)を中心とした町である。白山宮はその神体を白山の山体そのものとし、また加賀国の一宮としても位付けられていて非常に格式高い寺院である。文化の中心としても認識されていた。
 江戸時代に入ると相次いだ火災から鶴来という表記に改められ、以後は商業の中心としても発展を続けた。大城下町金沢を控え、徐々にその勢いを奪われていったといわれるが、酒造と煙草生産を核とした産業が発達し、六斎市と称された定期的な市も開かれ賑わいをしめしていた。白山比盗_社も加賀藩の保護を得て、引続き多くの信仰を得、参拝者が多く訪れた。
 訪ねたのは折しも年始の初詣の頃合で、金沢市内方面からも多くの参詣者が見られ、町は賑っていた。都市の近郊地としてよりも、白山を控えた神聖な地として今でも受継がれているように感じた。


訪問日:2011.01.01 TOP 町並INDEX