鶴橋の郷愁風景

大阪市生野区【商工業地・都市部の非戦災地区】 地図
 
町並度  5  非俗化度 4 −異国情緒ただよう昭和の商店街−








鶴橋商店街
 

 鶴橋というと大阪でも割合特徴的に感じられる地区で、それは駅を出るとその境も曖昧なまま始まる巨大な商店街があるからだと思う。JRと近鉄の線路が直交し、近鉄の高架周辺を中心に薄暗く狭い通路に沿って各種商店がひしめき合う。一般に鶴橋商店街といわれる区域には、他に鶴橋西商店街や東小橋南商店街などと呼ばれる5箇所の商店街群を含んでいる。生鮮食料品を扱う店も多いが、目立つのが肉屋(焼肉店のある一角もある)、キムチを中心とした韓国の食材を扱う店、そしてまた韓国の民族衣装を扱う店など、韓国の色彩が濃いことだ。
 大阪市には明治以降、本格的な商工業都市として整備され、鶴橋を含む現在の生野区付近は上町台地東側の低湿地帯であったところを抜本的に開発し、人口が急増した。とりわけ韓国からの移住者を多く受入れたのがこの地区で、当時彼らは豊かな生活を夢見、大陸から渡って来たのである。
 戦後の闇市が基盤となっているこの商店街は、一時代前の昭和の雰囲気が非常に濃厚に漂っていて、古い町並の一体系として紹介するに十分なものがある。一部の商店ではまだ天秤による量り売りがなされ、もはや死語ともなりつつある八百屋という言葉を想起させる。店先では大阪弁だけでなく韓国語も聞かれる異国情緒のある商店街で、最近全国各地で画一化されつつある郊外型大型商店とは対極的な姿を示す、我国にあっては非常に独特で貴重な商店街といえる。冷やかしでも一度は訪ねる価値のあるところだ。所々に立食い形式の狭い焼肉屋・一杯飲み屋、チヂミなどを焼く店が挟まって混沌とした雰囲気が支配し、歩くだけでも刺激性が強くしかも楽しい。
 商店街を出外れて東側に足を伸ばしても、古い佇まいが所々残る。戦災を受けていない地区の一つでもあるため下町風情のある長屋や町家風の建物、路地などがあり、町工場や小さな商店も眼につく。他の市内の非戦災地域に比べると大柄な商家風の建物が少なく、一般庶民中心の町並だったようだ。

 鶴橋商店街は移転もしくは廃止の噂も一部で聞かれる。しかしそれはディープ大阪とも言うべき大阪の本来の顔の一つを失うことにもなる。時代遅れで不合理な側面もあろうが、各方面の取材陣が連日押しかけ学校からの見学も行われているなど文化財としても非常に価値の高いものであることを認識してほしい。





商店街を出外れても非戦災地区でありやや古い町並が連なっている 鶴橋五丁目の町並



中川西二丁目の町並

訪問日:2007.12.30 TOP 町並INDEX