苗羽の郷愁風景

香川県内海町<工場の建物群> 地図 <小豆島町>
 
町並度 5 非俗化度 6 −企業が形成する町並 醤油醸造の香ばしい匂いが漂う−




丸金醤油の工場群 丸金醤油の工場群






国道沿いの丸金醤油の建物 近代化遺産のような重厚な構築物です。






立入禁止の構内にもこのような工場群が連なっています。 工場より寒霞渓付近の岩山を望む


 播磨灘の西端を限る小豆島は瀬戸内では二番目の面積を有する島で、観光の島としてもよく知られ外来客が多い。素麺、醤油や海産物など特産品も多く、観光客の多くはそれらを土産にして帰路につく。
 島の南東部にある内海町苗羽(のうま)地区。ここはその内醤油醸造が古くから盛んだった地である。
 江戸期はその多くが幕府領として経過した。西隣の馬木地区は天正年間(16世紀後半)に播州赤穂から塩浜師が移住してきて、一帯では製塩が盛んになった。江戸中期になると塩をもとにした醤油醸造業が興って、この苗羽にも文政年間(19世紀前半)には数軒の醤油業者があったという。明治期にはさらに盛んになって、最盛期には醸造家14を有していた。
 丸金醤油が明治中期にここに会社を設立し、他の中小企業を含め同業組織を結成した。その後合併が進んで、当社が島内でもっとも大きな企業ともなり現在を迎えている。
 一方海を控えて漁業も盛んに行われた。波静かな内海湾は鰯漁の絶好の漁場であった。また醤油をはじめ塩や素麺などを海運を通じて全国に配送する廻船業もおこった。
 現在は内海町の一集落となっているが、この町を歩くと醤油の匂いが香ばしく漂い、懐かしいような気分にさせてくれる。そして一大企業になった丸金醤油の建物は、町の中央を走る国道の両側に大きく展開して醤油の町の代名詞を演出している。一角には公開されるマルキン記念館があり、伝統の醤油醸造技法が公開される。それより何より、この丸金醤油の各建物群が古色蒼然、旧式極まりないのがよい。外壁を焼板塀に囲われた土蔵造りであり、国道の横路地に延々と続く風景は絵になる。この醸造工場自体が「古い町並」を形成している。
 一部は関係者以外立入禁止であるため全体像を捉えにくいが、構内の建物も同様で、極めて珍しい例と言えるのではないだろうか。


訪問日:2004.12.11 TOP 町並INDEX