海尻の郷愁風景

長野県南牧村【宿場町】 地図 
 
町並度  4 非俗化度 9  −八ヶ岳連峰の裾野を辿る甲州脇往還の宿駅−










 佐久地方の南端に位置する南牧村。西部は八ヶ岳連峰の裾野が緩やかに広がり、野辺山高原などの山岳景勝地もあって訪れる人も多い。東部は千曲川や支流沿いに耕地が開ける。
 村域北部の海尻地区は中世に城が構えられていた。八ヶ岳山麓の舌状台地に砦を構え南の甲州勢に備えたもので、国境に近いこともあり軍事的拠点だったのだろう。
 廃城後、城の東側の千曲川沿いに甲州脇往還が整備された。当往還は中山道の岩村田宿から分岐し、野沢・高野町・上畑・海尻・海ノ口・平沢の各宿駅を経て甲州街道の韮崎宿に達するもので、佐久地方の動脈でありまた善光寺等の信仰の道としても利用されていた。宿泊業務より馬継ぎが主な任務であったが、安永5(1776)年に交わされたこの六ヶ宿問屋連印の議定書によると、通過荷は茶・綿・紙・楮・下駄・塩・生姜・生薬など多岐にわたっている。
 国道140号より東側、千曲川寄りに街道筋が残る。脇街道らしいささやかな町並であるが、古い町並らしい色は随所に感じられる。平入り妻入り混在で真壁が目立つのは佐久地方中南部に見られる特徴のようだ。また庭木に亭々たる大木が目立つのも歴史と格式を感じさせる。ヒメコマツという高地性の樹木が植えられることが多いようで、一部は県の天然記念物に指定されていた。八ヶ岳麓一帯は良質の木材が得られ、宝永4(1707)年に現在の善光寺金堂が建替えられたときは、この地域の木材が使われ付近から千曲川の川流しで運んだといわれる。





訪問日:2018.09.24 TOP 町並INDEX