浦安の郷愁風景

千葉県浦安市【漁村・港町】 地図
 町並度 3 非俗化度 6 −都心近くに残る奇跡的な漁師町の痕跡−
 




堀江三丁目の旧宇田川家住宅


 浦安は県最西端、東京ディズニーランドがある町としても知られている。しかしここで紹介するのはそれとは全く違うこの町本来の姿を留める町並である。東京と名付けられる施設があることからもわかるように都心から30分足らずで到達できるところで、郊外地として都市化はほぼ完了している。
 江戸初期には製塩業が行われていたが、江戸川河口に位置していたことから海水の塩分が低く効率の低いものであり、やがて漁業専業となる家々がほとんどとなった。 古くからの町は猫実村と堀江村で、両者の間を江戸川から分かれる境川が流れていた。現在も健在で運河のような景観が残っている。今では度重なる埋立てによりこの地区は内陸深く後退してしまっている。
 現在境川を挟んだこの二つの地区を歩いても、漁師町を思わせる風景はほぼ残っていない。現代的な住宅地が展開しており古い町並の存在を感じさせないものである。
 その中にあって川の一筋南側の通りには比較的古い時代の構えを残した家々が幾つか残る。その中で特筆されるのが旧宇田川家住宅で、これは当地を代表する商家であり明治2年の建築、商店のほか郵便局などとしても利用されてきた旧家である。市により保存され内部は無料で公開されており、貴重な漁師町の商家が見学できる。
 また近くには典型的な漁家建築である旧大塚家が復元され生活風景が再現されており、こちらも見る価値がある。
 この二つの保存された建築物があることは非常に貴重なことではあるが、古い町並としては他に数軒の町家風出桁建築、看板建築などであり連続性はなかった。


 
 


堀江三丁目の町並




堀江三丁目の町並 猫実三丁目の町並


 しかし商家と漁家というこの地を代表する二つの旧家が残っていることは町並探訪としては外すことは出来ず、その価値はある。浦安の歴史が凝縮された二軒だからである。現在は陸封されてしまいかつての風情はとどめないものの、この付近が漁村の中心であり東京湾へ出向いた漁船が次々と付近に横付けされ水揚されていたのであろう。
 明治初期にかけては江戸川水運の要衝であったが、その後国鉄総武本線のルートからはずれ、ずっと後になって地下鉄東西線がここに伸びてくるまで陸の孤島ともいえるところであった。わずかとはいえ今でも漁師町としての面影が残っているのはそのためもあるのかもしれない。
 




境川沿いに残る旧大塚家住宅及びその内部

訪問日:2009.05.31 TOP 町並INDEX