宇龍の郷愁風景

島根県大社町<漁村> 地図 <出雲市>
 町並度 5 非俗化度 8 −岬に接する漁村−
 


宇龍の町並 木造家屋の密集した漁村集落である







日御碕神社

 出雲大社より北西に海岸を辿ると日御碕という岬にたどり着き、観光地ともなっている。岬付近の松林は全て幹が海とは反対方向に捻じ曲げられるほど季節風の強い所である。
 ここで紹介する宇龍は、その日御碕の膝元ともいえる位置にある漁村集落である。岬付近が観光客の訪れが多いのに対し、集落内は外向きにあしらった色は全く見られず素朴な漁村風景が展開している。そして家々は切妻平入りの密集型集落に適応した建て方となっていた。一般に漁村は秩序なく入組んだ狭い路地に沿い不規則に家屋が建てこんでいる例が多い中で、ここは比較的整然とした佇まいを見せる。
 宇龍は江戸時代には漁村のほか、西廻り航路の風待ち港としても利用され、藩蔵や遊女も置かれていたといわれる。明治以後も港として重要度が高く、日本海の航路を経由して米や木綿を移出、石炭や砂糖などを移入し、近在の村々に供給している。鄙びた建物だけでなく、ある程度の財力を基盤にした建物が見られ古い町並としての体裁が保たれているのも、そのような歴史による所が大きいのだろう。
 古くは日御碕社と深い縁があり、中世には神領ともなっていて、船の寄港による諸役は社家に納められることになっていたという。日御碕社は集落から岬に通じる小高い丘を越えた西岸に面してあり、正保元(1644)年松江藩によって建立されたという朱塗りの社殿が美しい。
 海に突当たったところに岩だらけの小島(経島)があり、初冬から初夏にかけて海猫が繁殖のため大群で棲み付き、辺りは鳴声で包まれる。



日御碕神社付近の町並
 
   
訪問日:2007.11.03 TOP 町並INDEX