宇田郷の郷愁風景

山口県阿武町【漁村】 地図
 町並度 4 非俗化度 10 −街道と漁村が接し栄えた日本海に面する町−

         

 宇田(宇多)は北長門地方、日本海に面する漁村集落だ。もと宇田郷村といったが戦後に阿武町の一部となり、現在は山陰本線の駅にその名残を留める。
宇田の町並 国道と日本海の狭間に集落の展開がある










 
 古くからの漁村であり宇田浦と呼ばれた港は今でも集落の裏手に静かな舟溜りを残しており、風情ある水辺の風景を展開させている。海との強いかかわりにより息づいてきた集落であることは歴史を知らなくても間違いないところだろう。慶長期には既に浦屋敷36軒があり、52人の漁民の他17人の商人が居り、一方で農民も100人余りあった。半農半漁の村であった。
 山陰道が通っていたこともあり漁村と接することから商業も栄え、箕や鍋釜、油や塩、蝋燭などを扱う商人があり栄えていた。一時は本陣も置かれるなど宿駅的役割を果していた。また後背地である山間部からは年貢米が運ばれ、それらは萩浜崎の船問屋にむけて頻繁に出帆していったという。
 町並全体を歩いてもそれほど時間はかからない小さな集落である。しかし中央を流れる川を中心として独特の赤褐色の瓦に纏われた良い雰囲気の家並が続き風情を感じることが出来る。国道の近くには造り酒屋の主屋が虫籠窓の中二階部を見せ、また堂々たる土蔵を従えており、その横の路地からは日本海を遠望することができる。
 国道を走っていると通り過ぎてしまうだけだろうが、素朴な漁村集落風景は今や稀少価値のあるものであろう。
 


訪問日:2009.06.28 TOP 町並INDEX