卯辰山麓の郷愁風景

金沢市東山他<寺町> 地図 
 
町並度 5 非俗化度 5 −起伏ある山裾に展開する寺院街−
 


 卯辰山とは金沢市街地に接する丘陵性の山地で、河北郡小坂荘より東南東(卯辰)の方向にあることから命名された土地といわれる。
 江戸初期の元禄期には町立てされていたといわれ、またその後市街地にある寺院群が次々とこの付近に寺地を移設し、卯辰寺町と呼ばれる地区を形成した。現在でも日蓮宗の寺を中心に、30余寺が山裾に集中し顕著な寺院群を形成している。
 この地区は花街で有名な東山茶屋街を取囲むような一帯で、多くでは起伏あり、階段も多い。また街路は無秩序に折れ曲り、小路や袋小路が多く派生している。重要な寺院が集積する地区のこと、外敵に狙われにくいように、視野の遮断を図る目的もあったのだという。
 観光客で賑う東山茶屋街とは打って変わって、自動車の進入も容易でないこの地区では静けさが支配している。土壁または板塀に囲われた寺院は厳かでありながら土や木の暖かさを感じさせる町並風景を創出し、散策には打ってつけの一帯であろう。
 


卯辰山麓の寺院自らが伝統的な町並を形成している






 麓から平地に降りると、切妻平入りの町家建築が散見される路地風景が散見され、やがて東茶屋街の華美な佇まいに接続している。この付近になると昔の雰囲気そのままの金沢市街地を思わせる。
 東茶屋街を訪ねる観光の方で時間があるならば、足を伸ばして背後の山裾をじっくりと歩いていただきたいところである。
 この地区は藩政期の寺町としての都市構造が原型を保っているとして、重要伝統的建造物群保存地区の選定に向けての動きを示しているようだ。





東山二丁目の町並 東山一丁目の町並



訪問日:2011.01.01 TOP 町並INDEX