宇和島の郷愁風景

愛媛県宇和島市<城下町> 地図 
 町並度 3 非俗化 6  −城の南側に微かに残る城下の痕跡−





 佐伯町の町並




 元結掛の町並
 

 宇和島市は南予地方の中心を成す町で、人口は7万人ほどと小都市ではあるが江戸時代には本格的な城下町が建設されており重厚な歴史を有している。町の中央に宇和島城址があり、市街地はそれを取囲むように展開し、北東側に宇和島駅が存在する。
 16世紀末の文禄4年、藤堂高虎は宇和郡の中心をここに定め、海辺の僅かな平地を利用して築城し、同時に城下町の形成にとりかかった。辰野川と神田川に挟まれた扇状地で、それらを天然の濠として利用し、また当時は城の北から西は直接海に面していたようで、川にも海水が流入し濠の役目を果していた。北から東側は町人町を配し、南側に侍屋敷を構えていたという。元和期の宇和島藩成立時には、城下に既に約500軒もの町家があったといわれる。
 城址の南に天赦園という庭園があり、観光地の一つとなっている。この辺りは当時は海であった所で、2代宇和島藩主宗利が埋立てを行い、浜御殿と称し隠居所を作ったのが始まりという。この南東側、佐伯町から神田川を挟んで元結掛にかけて古い佇まいが残る。宇和島は戦災を受けているため城下町を思わせる古い町並はほぼ全滅しているため、貴重なエリアである。平入りの町家、二階に木製の欄干を備えた旅館風建築、造り酒屋などもあり、古い町並としての体裁を保っていた。
 市内中心部には城址東側の本町追手に残る明治末期開業の「木屋旅館」が精々異彩を放っている程度で、古い町並としては残っていない。この旅館は国語学者金田一春彦氏や、作家司馬遼太郎氏が宿泊したことでも知られる老舗の旅館である。
 
 




佐伯町の町並 本町追手の木屋旅館



訪問日:2009.05.04 TOP 町並INDEX