金山の郷愁風景

山形県金山町【宿場町】 地図
 町並度 6 非俗化度 5 −羽州街道の宿駅を基盤に特徴的な町家が見られる町−



 金山町は県の北東端を占める山間部にある。町域の南西部は最上川支流による平野部がわずかにあり、中心市街地を国道13号線が貫いている。県下有数の杉材の産地とされており、藩政時代より植林が政策的に行われたことによるという。
特徴のある妻入り町家が見られる金山の町並




 

 
 町の中心的な歴史機能としては羽州街道の宿場町としての役割が第一に挙げられる。この街道は奥州街道の桑折(福島県)から陸奥油川(現青森市)に至るもので、特に秋田藩重鎮の江戸往来に多用されていた。金山は中世には山城があり、既に小さな城下町が建設されており定期市も開催される町場であったため、街道を引き入れ重要往来の対応に堪えうる構造的・経済的基盤を有していた。参勤交代時には本陣も定められ本格的な宿駅機能を発揮したという。羽前最北の宿場であり、峠を控えていたこともあり多くの大名はここで旅装を解いたことも宿場町としての発展を揺るぎないものとした。
 しかし、明治後期に開通した奥羽本線は新庄からこの金山を経由せず西に外れた真室川を通って秋田県に抜けるコースを取った。そのことで金山は交通の要衝としての地位を失い、衰退を余儀なくされた。
 そのことが逆にこの町にとって結果的に良いものになっているのかもしれないと、町を歩いて思った。幹線国道は通過しているものの、明治から戦後しばらく間の絶対的な交通網であった鉄道から外れたことによって、宿場町当時の姿が大きく改変されることなく残っているからだ。そしてそれは地元が十分に意識され、守っていった結果であることも大きい。金山町は平成の大合併の流れに安易に応じることなく、独自の自治を守っている。応援したい町である。
 伝統的な建物はすべて妻入りで、街路に向けて屋根から角のような突起物がある外観が強い印象を与える。金山型住宅という言葉があるほどで、しかしそれは外観の特徴ではなく、名産の金山杉を用いた建物全体を指すようなのだが、漆喰壁に木組を表した真壁の二階正面部とともに古い町並の要素として際立つ姿であった。
 外部から訪問する客を意識した色が濃厚に感じられるが、観光地化を目指しているのではなく歴史に根ざした個性的な魅力を外部に発信させたいという思いが感じられ好感が持てる。町の中心にある下見板貼りの洋風建築が開放され、探訪マップや歴史が紹介されており、まずここを訪ねて予備知識を得てから散策することをお勧めする。
 町の裏手には金山大堰がある。これは農業用水、そして宿場の貴重な水として整備された水路で、現在も滔々と清い水が流れ、町中へと供給されている。 
 








金山大堰沿いの風景

訪問日:2012.08.13 TOP 町並INDEX