輪島の郷愁風景

石川県輪島市 【産業町・港町】 地図 
町並度 5 非俗化度 5 −奥能登の中心都市−



 輪島というとまず朝市というイメージが一般には強く、多くの観光客を迎え入れている。実際私が訪ねたときも連休中のこともあり雑踏ともいうべき状態で、能登半島の一大観光地として認知されている。
 中小都市ながら能登半島では七尾と並んで代表的な町であるが、金沢とを結んでいた国鉄七尾線は民鉄転換を経て廃線となっている。一方近年になって自動車専用道が整備され、奥能登のこの地にも比較的手軽にたどり着くことが出来るようになったことも要因だろう。
河井町の町並




河井町の町並




朝市の開催される付近にも伝統的建物が散見される 鳳至町石浦町の町並




鳳至町下町の町並 鳳至町上町の町並
 

 日本海の外海に直接接しており、環境的には厳しい土地である。しかし港町として発展しないわけはなく、古代から大屋湊という名で開け、中世には日本海側を代表する港町に発展した。西廻り航路の隆盛期にはその寄港地にも指定され、多くの廻船問屋が存在した。
 各種産業もこの奥能登の独特の文化をもとに大きく発展している。『能登名跡誌』には「鳳至町(現在の輪島市中心地)に御印物を頂戴せし鍛冶十三件あり。輪島庖丁、小刀の始なり。其外名物多し。輪島索麺・竪地漆器・熨斗蚫類・海草の産名物なり」とある。中心部の鳳至・河井町に対しては前田利家が楽座を布告し、自由に商売を行えるようになった。現在も名産品として有名な漆器産業は索麺の衰退にかわり台頭してきて、全国的な販路を持ち以後一大産業として発達した。
 最近になって海岸部に観光施設や大規模な駐車場が整備され、この付近より朝市通りにかけては観光地の雰囲気だ。町並に伝統的な姿はそれほど大きくは残っていない。朝市通りを含む河合町界隈では所々に妻入り商家の建物が散見され、店舗や観光施設などに挟まれ純度は低いものの、旧市街地の中心であることがわかる。さらに鳳至川を渡った西側にも断続的に妻入りを中心とした古い建物が見られ、石浦町の界隈では一部連続性が保たれていた。
 なお東に大きく外れるが市域の東端付近に上時国家・下時国家という二棟の重要文化財の建物がある。それぞれ庄屋・肝煎を勤めた名家であり、訪ねる価値のある旧家だ。
 
  

訪問日:2013.05.03 TOP 町並INDEX