大沢・上大沢の郷愁風景

石川県輪島市<漁村> 地図(大沢)地図(上大沢)
 
町並度 6 非俗化度 7 −間垣と呼ばれる厳重な垣根に覆われた二つの集落-

       

大沢集落を俯瞰する 海岸沿いの間垣が見える

  


 輪島の市街地から西へ10kmのところにここで紹介する大沢・上大沢地区はある。この付近の海岸線は険しく、急斜面の崖がかなりの角度をなして海に没しており、崖の中腹を辿る道路からは迫力を感じる海景が展開する。
 この二つの集落はそのような厳しい地形の間にわずかに開けた平地にへばりつくように開ける漁村だ。
 両者に共通する特筆すべき点は「間垣」と呼ばれる竹垣が、外海に面する集落の北側を中心に巡っている点である。竹と入っても苦竹という非常に細い種類の竹で、そのため隙間なく内部の家屋や家並を外側から伺うことは不可能である。特に上大沢集落では、小さな集落の外周が全て間垣で厳重に囲われ、集落内は閉鎖された小世界を形成している。集落内の立ち入りを禁じる注意書きもあり、余所者を容易に受け付けないような雰囲気が支配していた。
 両集落とも中世にはその名が見え、漁村集落として発展した。江戸期より多くの漁船を有し、また鯖の加工なども行われていたという。平地がほとんどないため、純粋な漁村として発展していった。大沢村には明治に入り駐在所が設置されるなど近隣諸漁村の中心的位置を占めた。
 間垣のある風景はこの地方独特のもので、その整備は海岸に面した家の者が個人的に行っているのだという。維持は簡単なものではないだろうが、奥能登の日本海岸の厳しさを象徴するようなこの集落風景、今後も風物詩・文化遺産として息づいてほしいものだ。




大沢の町並




大沢の町並 上大沢の町並 集落は完全に間垣で囲われている


上大沢の町並

訪問日:2013.05.03 TOP 町並INDEX