和気の郷愁風景

岡山県和気町<商業町・川港町> 地図
町並度 5 非俗化度 9 −吉井川の川港として発展した−




造り酒屋・郵便局の建物などが残る和気町旧市街


 吉井川の中流域に開ける和気の町。山陽本線や山陽自動車道も通り交通至便の土地で、駅の南地区には商業施設が集積している。
 和気の歴史は吉井川とのかかわりとともにあった。川があったからこそ出雲や畿内といった遠方とのつながりもあったと言ってよく、高瀬舟による荷の往来は流域に大きな経済効果をもたらした。和気には享保20(1735)年高瀬舟の船番所が置かれ、川港として発展をみた。明治に入ってからも舟運は盛んで、同10年の県への書き上げには年間600艘の船が入港し、米3000石、炭1万俵が積出されたとある。
 明治後半以降は鉄道の要衝となった。24年に山陽鉄道の和気駅が設けられ、大正12年には港町片上との間に片上鉄道が開通した。この鉄道は柵原の鉱石を片上港に運ぶ目的で敷設されたもので、ターミナル駅となった駅周辺には役所や公共機関が立地、商店・旅館なども集積し新市街が形成された一方、舟運で発展した古くからの市街地は衰退した。
 








 駅の北側、支流である金剛川を渡ると旧市街地に入る。現在は吉井川の堤防下に位置するがかつては直接家々が川に面し、河岸から荷が揚げ下ろしさせていたのだろう。最も見応えを感じる町並風景は街区の南部、古い造り酒屋の建物と洋風の郵便局が対峙している付近で、双方とも現役ではないようだが賑やかな時代の残照は十分感じることのできる風景である。
 北側の道筋も、平入りの町家風建築が多く見られ古い町並を残していた。ただし、所々歯抜け状態となっているのが気になるところであった。造り酒屋の界隈も使われていない建物が多く、近い将来町並から舟運で栄えた頃をしのぶことは困難になるのではと思いながらの探訪となった。

訪問日:2019.07.14 TOP 町並INDEX