矢部の郷愁風景

熊本県矢部町<在郷町> 地図  <山都町>
 
町並度 4 非俗化度 7  −国宝・通潤橋の近くに展開する町並−


 

町並の中心浜町にある通潤酒造の建物


 阿蘇南外輪山の外側、矢部町域では麓を流れ下る中小河川が複雑な流れを刻み、谷間と台地、高原が交錯した地形を示している。
 中心街の浜町付近では盆地状の平坦地が展開し、古くは熊本城下から延岡に達する日向往還の往来により町が発達した。この辺りでは特に矢部街道と呼ばれ、熊本城下から日向との県境近くにあたる在郷町・馬見原までの中間に位置していることからこの辺りに一泊する客も多かったという。
 町で見逃せないものに通潤橋がある。耕地が水源より高い台地にあり、特に水田への灌漑が長年の課題であったこの地で、安政元(1854)年にサイホンの原理を活用して建設された水路用の石橋で、市街地からもほど近いところに位置している。以前30年近くも前に訪ねた時は静かな風情であったが、折しも国宝に指定されたということもあって駐車場もほぼ一杯になるほどの多くの客が訪れていた。
 一方中心街の浜町では下市、上市といった地名が残り、商業が発達したさまが伺える。バス通りとなっているやや広い街路の二筋ほど北が古くからの町筋らしく、商家や旅館の建物が見られる。特に目を引くのが江戸時代中期に創業した老舗・通潤酒造のたたずまいだ。漆喰壁を巡らせ、厳かな門構えと二階部に虫籠窓を配した間口の広い主屋と土蔵群は非常に強い存在感があり、自らが町並景観に深く貢献したものとなっている。
 ただし通潤橋の賑わいとは対照的に、旧市街地はひっそりとしていた。
 




   
 



 
浜町の町並 


国宝・通潤橋


訪問日:2023.09.24 TOP 町並INDEX