八千穂の郷愁風景

長野県八千穂村【商業町】 地図  <佐久穂町>
 
町並度 5 非俗化度 7 −造り酒屋を中心に展開する町並−




土蔵の多く見られる八千穂の町並
 

 八千穂村は佐久地方の南部、南望すると八ヶ岳連峰がなだらかながらも雄大に迫ってくる。
 しかしこの山嶺を越えて諏訪地方との交易が江戸期からありそれによる賑わいもあったという。また甲州街道とを結ぶ佐久甲州街道が千曲川の左岸に通じ、甲信の物資輸送や善光寺参りなどの信仰の道としても利用され往来も多かった。
 一方千曲川右岸、小海線の駅付近から北側に重厚な町並が見られる。その中心にあるのが造り酒屋・黒沢酒造である。
 黒沢家は古くからの豪農家で、蓄えた資本で19世紀前半の天保年間の頃より江戸に商品を出し商取引を重ねた。明治以降、折からの養蚕・製糸業の隆盛に乗り機械製糸場を開設、金融業にも進出した。明治10年には国立第十九銀行も設立、その5年後には私設の東山銀行も発起させた。
 








 造り酒屋としては安政5(1858)年に創業。主屋をはじめ各施設の建物は堂々としながらも古色を帯びた格式を感じさせ、この町並を自ら形成しているといっても言い過ぎではなかろう。サイトを覗いてみると、千曲川最上流の蔵元として売り出し、酒の資料館やギャラリーなども開設し外来客も積極的に受け入れているようであった。観光施設化に傾倒することなく、伝統に根ざした町並風景を演出し続けてほしいものである。




自ら町並景観に貢献する黒沢酒造

訪問日:2018.09.24 TOP 町並INDEX