矢掛宿の郷愁風景

岡山県矢掛町<宿場町> 地図 
 町並度 7 非俗化度 4  −本陣・脇本陣双方がそのまま残る町は貴重−





 
本陣石井家住宅 公開される大名用の寝室及び応接間★
 
 

 矢掛宿は、山陽道の宿場の中で最も旧態を留めている。本陣及び脇本陣が両方とも現存している旧宿場は非常に珍しく、そのことだけでも当地は稀少な古い町並であるといえる。
 本陣石井家住宅ではボランティアガイドにより詳しく案内していただける。江戸時代中期の建築とされるが年代は定かではない。大名、藩主等の超重要な客の宿泊を担う本陣としてだけでなく、酒造業、両替商など手広く手がけた豪商で、敷地の裏手には酒蔵が残り、当時の資料も展示される。母屋は珍しい入母屋造りとなっていて土間が裏手まで貫通している。牛馬を繋いでいたところと推定される。中庭に接したところに上段の間と言われる大名の寝室がある。実際はほとんど使われることが無かったとのことで、金箔を施した襖、欄間の意匠が見事であった。
 補完施設としての脇本陣(高草家住宅)も週に2日公開されるが、当日残念ながら公開日ではなかった。脇本陣周辺は連続した町並景観がみられ、矢掛の町並の真骨頂をなしている。
 当地の町家は他所にも増して間口が狭く、奥行の長い「ウナギの寝床」で、最長の物では奥行103mもあるという。これは京都のなどと同じで、間口幅によって税率が課されていたからだそうである。現在は国道が走るが、裏手より小田川に直接船を出せる構造であったらしい。そして特筆すべきが、妻入り町家の多いことである。一般に山陽筋の町家は平入りが多いのだが、ここでは約半数が妻入りで占められ、特に脇本陣周辺では妻部を通りに面した姿が連続し、特徴ある町並景観を呈している。
 ここは近年開通した井原鉄道の沿線でもある。神辺宿より旧街道に沿うこの鉄道を利用しての町並散歩も面白い。





旧脇本陣高草家 旧脇本陣付近の妻入りの続く町並




※★印の画像は2002年5月、他は2005年1月に撮影したものです。

訪問日:2002.05.06
(2005.01再取材)
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