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| 本郷の町並 右は唯一残っている旅館 | |
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本郷村は岩国市に流れる錦川の支流・本郷川沿流に開け、かなり山深いところである。各方面からの道路が通じているが幹線道路ではなく、通過点にもなりにくいところで、町中もひっそりとしていた。 藩政期から紙漉きをその業としていたことは先に訪ねた宇佐郷と同様であった。藩は原料となる楮の生産者とその量を帳面に登録させ、それを紙に漉いて所定の量を納入させた。それらは周防山代紙として大坂などで販売されたが、享保3年には当地の紙漉百姓900人が窮状を訴えるため萩へ向うなど彼ら農民の生活は潤うことなく、苦しいものだった。 まとまった集落は本郷のただ一ヶ所で、しかしながらここには一つの町場としての家並の広がりがある。それらは赤褐色の屋根瓦を持つものが多い。先に訪ねた宇佐郷はここから北に山越道を経てつながっており、同様に赤瓦が見られることから考えると、この街路を介して古くから山陰方面との交流が深かったものと思われる。幾つかの街路が交わり、町場が形成されているという点も宇佐郷と共通するが、大きな商家や店舗の建物は少なく、小規模な妻入りの家屋や一部平入りの町家などが、街村のような形で一列に連なっていた。しかしその街路は本郷川に沿って地形なりに曲線を描き、また坂道となっているため連続性のある家並風景となっており、豪壮な町家建築があるわけではないが次にどんな家並が見えてくるのか期待しながらの町歩きができる。 これといった産業はない町のようで、町中を歩いても地元の人を見かけることは少なかった。 |
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| 左の木造建築は旧村役場 | 本郷川沿いの風景 |