山中温泉の郷愁風景


石川県加賀市【温泉町・産業町】 地図
 町並度 4 非俗化度 4 −渓流沿いに開ける加賀温泉郷のひとつ 漆器産業も発達した−





共同湯・菊の湯と県道沿いの町並
 

 大聖寺川の渓口に展開する山中温泉は加賀温泉郷の一つで、発見されたのは1300年前に遡る。700年ほど前には浴場が設けられ、松尾芭蕉が奥の細道紀行で立ち寄ったとされ、その折に芭蕉は有馬・草津と並び扶桑の三名湯と讃えたという。大聖寺川の渓流のさまは美しく、こおろぎ橋から下流の黒谷橋にかけては特に景勝地としても知られるところで、宿泊客や訪問客に親しまれている。
 バスなども通る二車線の街路には土産物屋等が見られ、観光地的な色が若干感じられる。但し大型の旅館は大聖寺川対岸の渓流沿いに立地しており、町中を歩いていても目に入ることは少ない。共同湯である菊の湯付近がそれらしい程度である。むしろ町並としての見どころを構成しているのは裏通りの商家・商店群であった。老舗らしい構えの姿も目立ち、漆器の看板を掲げているものも幾つかあった。古くは安土桃山期からはじまった漆器生産は高い技術を持つ木地師を従え、主に椀等の食器を生産した。藩への上納品であったほか、温泉客に売るなどして知名度を増していった。




裏道に展開する商家・商店の佇まい
 往時の記録によると紺屋・豆腐屋・味噌醤油や酒などの醸造家・蝋燭屋など多くの商家が存在しており、狭い谷間の町にひしめいていただろう様子が小路を歩くとうかがえる。昭和6年に大火があったため現存する建物の多くはそれ以後に建築されたものと思われるが、赤瓦と黒瓦が程よく混在した家並は風格そして落着いた風情が感じられた。






訪問日:2021.03.28 TOP 町並INDEX