山代温泉の郷愁風景

石川県加賀市【温泉町・産業町】 地図
 町並度 4 非俗化度 3 −加賀温泉郷のひとつ 九谷焼の中心−

 




山代温泉の町並 右は古総湯
 

 山代温泉は加賀温泉郷を代表する温泉場の一つで、温泉郷の中では最も古い歴史を持つ。奈良期には開湯されていたといわれ、大聖寺川と柴山潟に流れ込む動橋川との間の緩い丘陵地に温泉街が展開している。
 かつては宿屋には内風呂はなく、中心にある共同湯に通う形が取られていた。共同湯を要に町が拡大し発達した様子は、現在歩いてもよくわかる。現在も共同湯として親しまれる総湯・古総湯付近から各方面に街路が延び、路地を辿っていても大きな通りに出るとここに至るようになっている。
 江戸期には大聖寺藩により温泉街は保護され、総湯には藩主専用の湯壺もあったという。また文人墨客の来訪も多く、与謝野晶子、泉鏡花ほか多くが訪れた。
 温泉宿の展開は、東側の丘陵部に団体向けの大型旅館が多く立地している。特に関西方面からの大口客が多く、職場旅行隆盛期には繁栄を極めたと思われる。一方総湯から北に向う二車線の通りに沿っては町の中心街が展開しているが、こちらは温泉街といった色は比較的淡く、商家建築などが残るやや古い町並が連なっていた。呉服商の格式ある看板を掲げた古い建物もある。
 また裏路地を辿ると、九谷焼窯元とある建物が所々に見られる。文政8(1824)年、大聖寺の町人・吉田屋伝右衛門により当地に吉田屋窯を開き、以後九谷焼の中心地として発展した。もともと盛んだった農業、温泉業とともに九谷焼も基幹産業として根付き、それにより商家の町並も発達したのだろう。
 




総湯より北側に向う町並




大型旅館街を望む 格式を感じさせる九谷焼窯元 

訪問日:2021.03.28 TOP 町並INDEX