矢名瀬の郷愁風景

兵庫県山東町<商業町(在郷町)> 地図 <朝来市>
町並度 6 非俗化度 9 −東但馬の市場町・街道集落−





山東町矢名瀬の町並は川を挟んで西側にはこのような大規模な商家を中心とした見応えのある家並が見られます。
 
  但馬地方南東部の山東町は丹波地方に接する町である。円山川の支流の合流点にあり、北側に丘陵を背負う立地で、旧街道の一本道に沿って歴史的に多層な家並が見られる興味深い町並である。

矢名瀬の造り酒屋  東部では主に明治期以降の建築と思われる木造2階建ての店舗建築が多く見られます。
この辺りもかつては繁華な商店街だったのでしょう。
 

 18世紀後半の明和年間頃には町場としての機構は揃っていたといわれ、医師をはじめ大工・木挽・紺屋・鍛冶屋などが存在している。この町ではこの頃から市が定期的に立ったとされ、矢名瀬市と呼ばれた。町には養蚕の盛んだったこの地方を反映して製糸・絹織物業者の他、酒造業などの商家が立地した。
 政治面では庄屋は設けず年寄職を置き合議制で町が運営された。一本道に沿った街道集落的な色合いも濃く、豊岡藩の参勤交代時にはこの地を通過し休息所があったという説もある。
 国道9号線の南に残る古い矢名瀬の市街は、かつての商業町、商店街の姿をそこかしこに留めてはいるが、人通りは少なく古色蒼然とした雰囲気だ。背の高い木造の2階屋はかつて遊郭的な使われ方をしていたのだろうか。そうした建物がある程度連続している町並の東部には確かに芸者の置屋があったと、地元の方は語ってくれた。虫籠窓を携えた塗屋造りの商家、中二階の旧家なども混在し、様々な時代に繁栄を示していたことを感じさせる。
 小さな流れを渡った西側には大規模な町家が数棟残り迫力の町並が現存している。造り酒屋の老舗の邸宅で、商業の集積する町であったことを表している。入母屋屋根の母屋は角屋などを従えた豪華な造りで、塀に囲まれた中庭を有していた。煙出しの越屋根も存在感があり、この町並のシンボルのようである。近くには本卯建を持つ町家もあった。
 この町は町並としては全く知られていないようだ。いずれは更新されるであろうこの古い家並。少しでも長く現存してほしいと願いながら後にした。
 


訪問日:2004.03.20 TOP 町並INDEX