矢島の郷愁風景

秋田県矢島町【城下町】 地図 <由利本荘市>
 
町並度 4 非俗化度 10 −鳥海山麓の小城下町−

舘町の町並


 
矢島町は県の南西部、南に出羽富士と呼ばれる鳥海山を控えた小盆地にある。鳥海山は修験の山とされ、多くの登山口のある中で矢島口は主要な登拝の拠点とされ、修験坊も18坊あったとの記録がある。
 中世は土豪矢島氏の支配するところであり、江戸時代には寛永17(1640)年に讃岐から矢島1万石に移封された生駒氏が統治をはじめ、小規模ながら城下町が形成された。また本荘に流れ込む子吉川の流域にあり、上流に遡ると羽後南端の町雄勝や院内銀山があり、さらに羽前方面へも開けていたことから、港町本荘とを結ぶ街道の要地でもあった。はっきりとした記録は無いが、宿駅的な機能も有していたと考えられている。
 町の中心は子吉川左岸に展開し、やや起伏のある台地地形をなしているため緩い坂道となっている街路が多い。町家建築や商家建築は妻入りで一階正面は店舗用にガラス戸に差し替えられたものも目立つが、二階妻部の真壁は良く残りこの地方の建物らしい姿である。舘町には塀に囲まれた厳かな邸も見られ、この付近が城下町としての中心をなしていたのだろう。舘町では鳥海山麓で一帯で盛んだった馬産を受け、江戸後期には馬の競り市が開かれていたという。
 この町は戊辰戦争時に激戦地となり、陣屋以下多くの建物が焼失したため現在見られる建物は古いものでもそれ以後に復興された建物である。比較的建てこんだ感じがなく、広々とした町の雰囲気があるのはそのためかもしれない。小さな町ではあるが造り酒屋が町の中心に二軒もあり、いずれも伝統的な構えを残し営業されている。酒造に適した鳥海山の豊かな伏流水があってのことだろう。
 また町外れにある土田家住宅は県内で最も古い民家といわれ、典型的な中門造りが保たれ国の重要文化財に指定されている。
 洋風建築や土蔵も所々に見られるが、今ひとつ統一感に乏しい。しかし地元の方々が少し意識を高めることによって町並としての魅力が発揮されるように感じた。

 

 




 七日町の町並(造り酒屋) 七日町の町並




城内の町並



土田家住宅(重文)

訪問日:2012.08.14 TOP 町並INDEX