八尾の郷愁風景

富山県八尾町<商業町・門前町> 地図
町並度 6 非俗化度 4 −伝統的な祭りも有名な富山平野南端の商業町−




日本の道百選ともなっている諏訪町本通の町並


 八尾町は富山平野の最南端を占め、神通川支流の井田川右岸の河岸段丘上に町が開けている。この町は春の曳山祭、初秋のおわら風の盆という2つの民俗祭が行われることで有名で、町の規模の割には知名度は高いといえる。
 町の起源は聞名寺の門前町としてであり、後に商業町として大きく発展する基礎を作った。商業町としての八尾は、背後に山間部の五箇山地区や奥飛騨地域を控えていて、それらからの物資が集結してきて、定期的に市が立つようになった。特に和紙や蚕、生糸などの取引が盛んであった。和紙は売薬の盛んな富山で薬包みに重宝されたことから一層需要が増し、一時富山藩により紙会所も設けられている。また蚕(蚕種)は幕末頃には全国17ヶ国に行商されるなど八尾蚕種は名声を高めた。こうして八尾は富山藩でだだ一つの他国との物資交易を行った町であり続けたそうである。
 町中にもそれにふさわしい家並が今でも残り、深い趣を感じさせてくれる。特に市街の南東側の山裾に伸びる諏訪町本通には伝統的な建物が多く残っている。この通りは「日本の道百選」に選定され散策客も多い。穏やかな坂が続き、石畳調に改修されたその街路の両側には、平入りの出桁造り町家が密度濃く残存している。

諏訪町本通では住民の意識の高さが伺われる



西町の町並


西町の裏側はこのような石垣が連続している
 
 但し、それらの外観は新しいものがほとんどで、格子や2階に張出された手摺などの木材も焦茶色に塗色され統一化されている。おそらくほぼ同じ時期に一斉に改修されたのであろう。しかし嫌味を感じるほどではなく、家々の玄関先には素焼の花瓶に季節の花が何気なく飾られていたり、小さな「粋」が随所に感じられた。祭礼や日本の道百選となったことなどで外部の訪問客を意識してのことだろうが、そのさりげない住民の心遣いは好印象であった。
 この町は最初に触れたように河岸段丘上の台地上の土地に町が展開している。川沿いは急崖となっていて数多くの階段が町の中心とを結んでいる。中でも聞名寺に近い西町辺りでは、丸い川石をうず高く積上げた石垣が連なる景観が見られた。八尾を象徴する眺めであった。


訪問日:2005.10.10 TOP 町並INDEX