横尾の郷愁風景

広島県福山市<街道集落> 地図 
 町並度 5 非俗化度 8  −山陽道と福山城下への街道の分岐点に栄えた町−


 福山市街地の北外れ、芦田川の支流高屋川に沿い横尾の町がある。ここは山陽道に接し、福山城下へ向う街道、そして山陰に向う石州街道との分岐点にあたっていた。今も高屋川を渡る鶴ヶ橋のたもとの福塩線踏切付近に出雲大社と刻まれた道標が残っていることがそれを証明している。いわば旧街道が巴に交わる地であり人々の往来が重なり賑やかな所であった。
 高屋川は大きな流れではないが当時は橋がなく、現在の鶴ヶ橋のやや東に渡し場があった。京方に向かい渡った先で街道は東西に分かれ、右に進路を取ると城下へ向う。町場は主にこの先に開け、商家が建ち並んでいた。
 「行程記」には、「ココヨリ福山城下マデ一里半」と記す。
 現在は福山市の一部となっているが、かつては深安郡横尾村として一つの町が形成されていて、往来する旅人や用務客などを相手に商店が連続していた。横尾飴という銘産物もあった。当時の町の雰囲気は、当時からこの街道の幅が現在の道路事情に堪えうる広さであったことからそのまま残り、古い町並として自動的に保存された。切妻平入で2階正面部の虫籠窓や海鼠壁などといった備後地方らしい家並が約300mにわたってある程度連続している。
 
横尾の町並



 国道313号線の一部であり非常に交通量が多く、しば
しば渋滞します。車が偶然途切れたのを狙って撮影しま
した。




横尾の路地 横尾の路地
 

 但し、現在では徒歩による人の往来に代り車が行交うだけとなり、商店も役割を終えた今では目もくれず通過するだけである。大型車がやっとすれ違えるだけの幅でしかないため町並を歩くにはかなりの危険が伴う。中には排気ガス等で漆喰がくすんでしまっている旧家もあり、古い町並としては劣悪な環境にある。鶴ヶ橋付近は渋滞することが多く、今後道路拡幅などでこの町並が消えてしまうことも懸念される。
 一方この商家群の裏側、高屋川側には落着いた路地風景が残っていて、喧騒を忘れさせてくれる静けさがあった。





訪問日:2004.11.03 TOP 町並INDEX