富山県高岡市<港町・漁村> 地図 町並度 5 非俗化度 10 −工業地帯の只中に浮島のように残る意外性の町並− |
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高岡市の中心部は小矢部川と庄川の下流に開けた平野部にあり、海岸からはやや離れている。この二つの川は河口付近では1kmほどに近接し、面白い地形をしている。この小矢部川と庄川に挟まれた狭い地域に吉久地区はある。 |
吉久の町並 | |
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港町・漁村としての歴史が古い町並として残っている。しかしこの地区は小矢部川河口西側の伏木から庄川河口東側の新湊、さらに富山市にかけて展開する大工業地帯の狭間で、そのような雰囲気ではない。殺風景なところにいきなり町家群が現れるところに、この町並の面白さがある。 加越能鉄道の軌道が走る広い街路から斜めに細い道を入ると、平入り、中二階の古い家並が連続して残っていた。出桁造りともせがい造りとも呼ばれる、軒に桁を張出させ屋根が大きく前に出たような外観が特色で、切妻の両端には袖壁が付く。屋根と袖壁、そして庇の四方に囲まれたような二階部は、北陸の町家の特徴である。玄関先が道路面より一段高くなっているのが雪の多い地方らしい。二階部分は漆喰が塗られているが、梁を浮き出させた真壁造りとなっていて、塗屋造りではなかった。格子もよく保たれ、全体的に木の温かさを感じる家々であった。庇には瓦が葺かれておらず板葺で、横に1〜2本の角材が渡されているのが多く眼につく。 ここ吉久は江戸期には加賀藩の米蔵があって、米奉行も置かれていた。領内の収納米は小矢部川を下りここで一旦荷揚げされ、大坂などへ運ばれた。また漁業基地でもあり、富山湾や小矢部川の鱒などの漁が古くから行われていたという。古い町並が残っているのは、当時からの家々の造りが繁栄を背景にしてしっかりしていたためだろう。 工業地帯の中に突如として現れるこの町並は、意外性だけでなくその質も市街中心の金屋町などと比較しても決して低いものではない。登録文化財に指定されている民家が一軒あったが、ざっと見たところ他に保存のために手を加えた様子は見られなかった。このままではやがては櫛の歯が抜けるように建替えられていき、古い町並はなくなることは明らかで、何らかの手を打ってほしいものだ。 |
訪問日:2005.10.19 | TOP | 町並INDEX |
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