吉野の郷愁風景

愛媛県松野町【在郷町】 地図 
 町並度 4 非俗化度 10 −土佐との国境近くに息づいた在郷町−





吉野の町並 直線的な街路に沿い家並が連なる
 

 松野町吉野地区は高知県との境に近く、四万十川の支流広見川沿いの狭い平地に集落が展開する。
 江戸時代は初期に宇和島藩領であった他は吉田藩領で、吉田藩はここに在町を建設した。それは土佐街道沿いに間口4間、奥行16間の町家が並ぶ計画的なものであり、山方物産と呼ばれた紙・楮・櫨・木蝋・椎茸などの産物の集散地として賑わいを見せていた。一方で、町家株という制度で外への発展が抑制され、域内の流通のみに限定されていたとされている。
 明治に入ってその制度は撤廃されたが、楮や和紙、櫨などの需要減退や鉄道の開通などにより次第に在郷町としての機能が薄らぎ、隣町の松丸や宇和島に奪われた。明治10年の記録では問屋13、仲介18、雑貨8、木蝋2、左官3、鍛冶1、酒造1などとある。
 吉野の町並は、計画的に造られた町らしく直線的な街路に整然とした家々の並びがあった。平入りの町家には軒下の持送りや開放的な1階部分、一部に虫籠窓や格子といった意匠が見られ、裏手に土蔵を従えたものもあり商業的に栄えていたことがわかる。商店の看板を持つものもあり、在郷町としての機能を喪失して久しいといいながら、商店が建ちならんでいたであろう名残が感じられるが、それも今や終焉を迎えつつあるといった風情であった。わずかに「清酒」と彫られた木製の看板のある店が細々と営業されている程度であった。
 しかし歴史を知らないで訪ねると、県境の奥深い地に思わぬ町場の広がりがあると感じその方が印象的となるかもしれない。
 









訪問日:2019.08.10 TOP 町並INDEX