吉岡温泉の郷愁風景

鳥取市吉岡温泉町<温泉町> 地図 
 
町並度 4 非俗化度 7  −平安期に歴史が遡る閑静な温泉地−





小規模な旅館や店舗の並ぶ吉岡温泉の町並




 吉岡温泉は鳥取市の西郊外、湖山池より南1km余りのところに小さな温泉街が展開している。歴史は古く、平安期、地区の有力者葦岡長者による発見と云われる。中世末期に領主であった亀井氏、江戸期に入り藩主の池田氏もよく訪れたという。6・7箇所の共同浴場と一部の宿屋には内湯もあり、この頃には既に温泉街が形成されていた。
 戦後になって源泉の統合や旅館・共同浴場への集中的な配湯を行い、訪問客も増し昭和44年には20軒の旅館に11万余りの宿泊客、共同浴場に20万近くの日帰り客を迎えたという。
 小さな川の流れに沿う街路の両側、そして一部の横路地に中小規模の旅館が並ぶ。現代風に改装されたものもあるが多くの旅館は創業が古い老舗で、観光ガイド風にいうと閑静な温泉地というところだろう。街路が流れの左右に二股にわかれる辺りが中心らしく、源泉の吹き出すモニュメントや足湯などがあり、付近に最近複数の共同浴場を統合・整備した「一の湯」がある。市街地に近いものの歓楽色は全くなく、古い町並的な風情も感じられる温泉街である。
 この吉岡温泉には日を改めて旅館に泊る機会を得た。家族経営の小さな宿で、老舗らしい造りや意匠があちこちに残りながらも現代の宿泊客向けに適度にアレンジされており、快適な宿泊となった。現在は大口客の減少により現在営業している旅館は9軒とのことで、ビル型の旅館も幾つか見られるが営業されていないものもあるようだ。
 逆にそのことで温泉街に風情が感じられることになっているとは皮肉なことではある。









訪問日:2020.10.05 TOP 町並INDEX