吉海の郷愁風景

愛媛県吉海町【商業町】 地図 <今治市>
 
町並度 4 非俗化度 10  −新田開発で形成された島西部の中心集落
 








 今治沖10kmほどにある大島の西半分を占める吉海地区。藩政時代は今治藩領で吉浦と呼ばれ、中部にある入江付近に古くから中心集落が立地してきた。
 ここは江戸期の新田開発により誕生したもので、現在も幸新田という地名が残る。元禄2(1689)年に着工、入江奥に大堤防を築き、河川の流路も整備して同10年に完成したものである。その頃塩田も造成され製塩が行われた。
 新田では米をはじめとした農業が行われていたが、村の財政は余り豊かではなかったようで、数十人単位の出稼ぎが行われていた。しかしその中には杜氏もおり、当地に酒造技術を持ち帰り造り酒屋を営む者が現れた。出稼ぎの副産物といえよう。また漆器の食器や器材などを仕入販売するものも多く、輪島・紀州などの有名どころから仕入れ、出雲や九州など各地に販売した。 
 古い町並の中心となるのは造り酒屋の建物のある小さな辻付近で、家並の密集度も高い。小規模ながらも在郷商業町として地区の中心であったようだ。現役の旅館や塀に囲まれた邸宅も見られた。
 但し、造り酒屋の建物は古い町並景観に最も貢献しているものの廃業されているようだ。建物だけでも失われることなきよう願いたい。
 
 
 





訪問日:2018.06.30 TOP 町並INDEX