湯浅の郷愁風景

和歌山県湯浅町<産業町> 地図
 
町並度 7 非俗化度 4  −もろみと潮の香りが漂う町−





大仙堀 ここから醤油をはじめ物資が積出された
 湯浅町は県の中部、紀伊水道に面する位置にある。大阪の通勤圏からは外れるため、町には地方の町らしい落着きが感じられ、歴史に支えられた伝統的な佇まいが目立つ。特に市街地の北部に古い町家建築が集中し、一帯は2007年に重要伝統的建造物群保存地区に指定されている。




北町通りの町並




中町通りの町並 浜町通りの町並




北町通りの町並 鍛冶町通りの町並


 町内には熊野古道が縦断しており、古くから熊野参詣の路として多くの人々が通過し、また宿所として賑っていた。港も発達し、漁業・商工業が栄えていた。
 湯浅は日本の食文化発祥の地とも言われる。それは我が国の代表的調味料、醤油の発祥地とされているからで、13世紀、中国より金山寺味噌の製造法をこの町に持ち帰ったところ、その製造過程で生じる沈澱液が美味であることに気付き、やがて沈澱液を得るために逆に味噌製造を手がけるようになったという。最盛期は江戸末期から昭和初期であったが、現在もこの小さな町に古風な看板を掲げた老舗が多数見られる。直売もされておりそれらを巡るのも湯浅の町歩きの楽しさの一つとなろう。
 町並が展開する旧市街地は一部を除きほとんどが狭い路地で占められ、外部からの乗用車の容易な侵入を拒んでいる。熊野古道沿いが最も古い市街地で、港や醸造業が栄えるに従い徐々に海に向って町が開発され、拡張されていったという。
 保存地区となっているものの現在のところ町家群には抜本的な手が加えられておらず、自然な形の古い町並として十分な味わいがある。人々の生活も全く着飾ることなく行われており、好感が持てる町並である。
 市街地の北端、山田川に接するところに大仙濠という、昔醤油の積出を行っていた港の跡がある。醤油や味噌をはじめ、有田地方特産の蜜柑、木材などもここから続々と積出されていたのであろう。濠に接して一際大きな構えの角長醤油商の通りからは、もろみの香りが濃厚に漂っていた。
 






醤油・麹屋の佇まい(2001・04撮影)


※注記のある画像以外は2009年3月再訪問時撮影
訪問日:2001.04.30
(2009.03.29再取材)
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