湯田中の郷愁風景

長野県山ノ内町<温泉町> 地図
 
町並度 4 非俗化度 6 −志賀高原の入口にあたる温泉地−





湯田中の旅館街

 長野駅前の地下駅からローカル鉄道の長野電鉄で1時間弱、北信地域に位置する湯田中に到着する。北側には野沢温泉や飯山市などの豪雪地帯を控えており、冬場は長野市内と比べると積雪量が多い。また東に向かい志賀高原などの山岳地帯を抜けると、草津温泉に達することができる。信州では軽井沢と並び上州への入口となってきたところだ。
 志賀高原から流れ下る夜間瀬川はこの付近で扇状地を形成し、温泉街はその扇頂近く、右岸側の段丘上に開けている。駅付近は町役場をはじめ山ノ内町の中心機能があるため、余り風情を感じることはできないが、そこから坂道に沿っては住宅街が連なる中で徐々に旅館が姿をあらわしてくる。川に近い辺りには大型の宿泊施設も見られるが、この街路に沿っては木造の旅館が中心で、温泉町らしいたたずまいだ。中には木造多層階建ての格式ある旅館もある。共同浴場も幾つかあるが、その多くは地元の客あるいは湯田中に宿泊する客専用となっており、一般に開放されているのは大湯のみである。しかしこの大湯は全国共同浴場番付の横綱に格付けされているという由緒あるものである。
 約1300年前に発見されたという非常に歴史の古い温泉場で、文政3(1820)に刊行された「但馬城崎湯治指南車」内で、諸国の温泉が紹介されており、その信州の項では諏訪湯、浅間湯とならび田中湯(湯田中)が紹介されている。また上州との交易も盛んで、草津とを結ぶ街道ともなり温泉街はそのまま宿駅として活用されたという。大湯が当時の中心であり、その前後に宿屋や料理屋が建ち並んでいた。俳人小林一茶も湯治に訪ねており、一茶の小道なるものも設けられている。草津温泉との間で物資と入湯客の交流も盛んに行われていた。
 現在は東2kmほどのところにある渋温泉にやや賑わいを奪われたような格好となっているが、深い歴史をもとに泰然と落ち着いている雰囲気を持つ温泉街であった。
 
 







訪問日:2012.01.02.03 TOP 町並INDEX